雨を愛でる
今年も本格的な梅雨シーズンがやってきた。家の中がじめじめしたり、外出の予定が立たなかったり、多くの人に嫌われる季節だが、私は昔から何となくこの季節が好きだ。
「梅雨」の語源は中国にあるそうだが、江戸時代に「ばいう」として日本に伝わった呼び方が「つゆ」に変わったのには、いくつか説があるらしい。「露」からの連想だとする説や、梅の実が熟して潰れる頃という意味の「潰ゆ」に由来するという説など。いずれの説からも、昔の日本人らしい感性がしのばれる。

その時代の人々は、この特殊な時期をどのように過ごしていたのだろうか。私の好きな過ごし方は、雨の不思議な力を借りて物思いにふけったり、敢えて少しばかり気を滅入らせることだ。
雨の力・・・。晴れ晴れとした空のもとでは、とうていセンチメンタルに物思いにふける気分にはなれないが、雨には、過去のほろ苦い記憶を呼び起こしたり、普段は心のどこかにしまい込んでいることを思い出させたりする力があるように思う。きっと、その力が「雨は気が滅入る」と感じさせるのだろう。しかし、ときには素直に身をゆだねたい気持ちになるのだ。
とはいえ、1か月以上も続く梅雨シーズン、物思いにふけってばかりいるわけにもいかない。センチメンタルどころか、メランコリックな季節になってしまう・・・それはぜひ避けたい。
ある民間の調査会社の調べによると、現代の梅雨シーズンは、インターネットをしたりテレビを見たりして過ごす人が大半なのだとか。私の好きな過ごし方は、他の人の目には、少し暗く映るかもしれない(笑)。しかし、もちろん、好きなだけ考え込んだ後は気分がすっきりして、何か楽しいことをしようという明るさも積極性もいっそう出てくるのだ。
私は、この雨の季節に感謝する。長雨の力でもなければ、毎日を忙しく突っ走り、ときには振り返るべきこともしまい込んで、そのまま走り続けてしまうだろう。明るく元気に、ポジティブに生きていくためには、たまには一人静かに考えることが必要。そのチャンスを与えてくれるこの季節を、愛でずにはいられない。
