マスクの気づかい
最近、通勤途中にすれ違う小学生を見ていて気付いたことがある。低学年から高学年まで、みんなマスクを付けているのだ。夕方家路を急ぐ子どもたちの多くも、きちんとマスクをしている。インフルエンザの流行のためか、学校で着用が指導されているのかもしれない。
そういえば、最近は用途に応じて形の工夫されたものや、違和感の少ない薄く軽いものなど、マスクの種類がずいぶん増えてきた。幼児用には、かわいいイラスト入りのマスクもあるそうだ。そんなことを考えながら眺めていたとき、ふと友人の話を思い出した。
外資系企業に勤める友人が、ある日マスクをして出勤すると、同僚の外国人と次のような会話になったそうだ。
同僚:「風邪引いたの?大丈夫?」
友人:「咳だけ。でも、電車の中で咳き込んだら迷惑だから」
同僚:「人に移さないためにわざわざ付けるの?」
友人:「自分も楽だからだけど、混雑した場所ではマスクをするのがエチケットなんだよ」
同僚:「へぇ、他人にそんな気づかいができるなんて、日本人はすばらしいね」
いつ頃からか、特に都市部では、自分のためだけでなく他人に迷惑をかけないために、マスクをするのが当たり前になった。予防目的もあるが、人ごみのなかで互いに気分よく空間を共有するためには、こうした気づかいが必要なのだろう。少し前からCMで話題になっている「江戸しぐさ」の思いやり・心配りの精神に通ずるところがあるかもしれない。
“こぶし腰浮かせ”や“傘かしげ”などの代表例で知られる江戸しぐさは、当時異文化のるつぼと化していた江戸の街で人々が仲良く共生していくために、町のリーダーたちが生み出し広まったものだという。
参照:NPO法人 江戸しぐさ ホームページ
今の時代、見も知らぬ他人への心配りは、関係を円滑にする目的よりも「自分が非難されないため」という消極的な理由からすることが多いかもしれない。それでも、“マスクの気づかい”などは、外国人の目には日本人らしい配慮ある振る舞いに映るのだ。
子どもにマスクをするよう指導するときには、それが他人への思いやりであり、そうした行動が争いのない社会につながっていくのだ、ということもぜひ教えたいものだ。
いや、私の場合は「我が振り直せ」が先か。立春も過ぎ、暦の上ではもう春。この冬は風邪を引くこともなさそうだと油断せず、きちんと振る舞わなければ。

