窓ガラス、風の流れ、内装・断熱材の性質。N邸の室内環境は、複数の要素の相乗効果で心地よく保たれています。
屋根も壁も外断熱材で覆われたN邸で、熱の出入りがもっとも心配なのが開口部。すべての窓に採用されたのは、遮熱タイプのエコガラスでした。
2010年の猛暑も、1階は28℃設定のリビングのエアコン1台で快適だったといいます。「エコガラスの効果で窓から熱が入ってこなかったのが、やはり大きいんじゃないですか」と栗原さん。深い軒も室内への日射を防ぎ、西日はエコガラスや障子で遮られました。

通風の工夫も重要です。
N邸は南に大開口、北は風抜き用に多くの小窓がつけられ、全体が風通しよくつくられています。気候のいい春や秋は家じゅうの窓を開けていますよ、と奥様。

北側の階段室には風抜き用の窓がふたつも。これも含めすべての開口部にエコガラスが採用された。
中庭の緑を経て畑まで視線が通る玄関の FIX窓もエコガラス。引き戸は右が和室、左がリビングに通じ、開け放てばリビングのエアコンの暖冷気が和室に流れる。
各部屋をつなぐ建具はトイレを除きすべて引き戸で、上部のガラス入り欄間も開け閉て可能。開けることで風の通り道ができ、エアコンの冷気がすみずみまで流れて1階全部が涼しくなったというわけです。
微妙な開閉調整がきく引き戸の、バリアフリー面以外の力が改めて感じられました。
また、外断熱材は内装材と同じく調湿作用のある自然素材のものを採用。余分な湿気を透過して外に排出し、適切な湿度が保たれるしくみになっています。
新築直後にNさんは温湿度計を購入し、毎日の確認が習慣になりました。
取材に訪れた11月末の室内も、湿度は60%弱とほぼ最適の値。N邸の快適な夏の秘密はここにもあるのでしょう。
そしてもうすぐ、初めての本格的な冬がやってきます。床にはほんのりと床暖房が入っていました。
「夏場が涼しかったので、冬は寒いんじゃないかと思っていたんです。でも床暖房だけであったかい。どうして?」奥様のこの疑問に「熱の移動がないからですよ。エコガラスの窓だから、少しだけ入っている床暖房の熱が逃げない。屋根も床も断熱材が覆ってるし」と栗原さん。
室温チェック担当のNさんも「床暖房は低めの設定で十分。夜11時にスイッチを切っても室温は朝まで20℃です。霜がおりた日も18℃でしたよ」これから迎える真冬が楽しみ、とにっこりしました。


玄関とリビングをつなぐ欄間も引き戸。開き具合は自由に調節でき、完全に引き込むこともできる。
「ダイニングテーブルにほおづえをついて庭を眺めているだけで一日飽きないですよ。家から出たくなくて」N邸の心地よさを象徴するような、奥様の言葉です。大好きだった外歩きはここに来てずいぶん減り、かわりに読書や友人を呼んでのお茶会など、家での楽しみが増えたとのこと。
テレビも見なくなりました。「中庭が見える椅子に座るとテレビに背を向けることになるんです。CDやラジオは壁のスピーカーから聞こえるし、食事のときも同じ場所に座っちゃう」
リビングの奥様お気に入りの席から見た、中庭の風景。竣工に合わせてつくった桜材のテーブルにほおづえをつき、木の葉の舞い落ちるさまを眺める豊かな時間がここに。
毎朝日の出を眺める習慣、色づく中庭の紅葉への感動、落葉したら待ち遠しいのは雪…と、季節感あふれる新しい暮らしが始まっています。
栗原さんは言います。「室内の快適さで時間がゆっくり流れる。それが、窓の外の景色を眺めているだけで楽しいという感覚になるのでしょうね」
雨や雪の日には部屋の照明を消し、中庭の植栽だけライトアップして家族で眺める。そんな楽しみ方もありますよ、と、またひとつ提案してくれました。
「家にいられる時間が増える、いいタイミングでこの住まいをつくった」と口を揃えるご夫妻。それを引き取り「今この家がないと、時間がいっぱいあるのに居場所がないものね」と栗原さんが笑いました。
旅行や趣味、友人との語らいなどリタイヤ後の暮らしを彩るものは数多くあるでしょう。そんな中、住まい手の豊かな時間を紡ぐ家もまた、かけがえのない存在ではないでしょうか。
我が家をいとおしく見つめて時を重ねるNさんご夫妻。次の楽しみは庭づくり、と話す笑顔のあたたかさが、木の温もりと柔らかく重なりました。
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