窓から見える青い空。この空がいつまでも続くように、いろいろ考えたいエコのこと。というわけで、エコ先進国と言われるドイツ、デンマークにお住まいのおふたりにも参加いただき、エコについてのよしなしごとを楽しく気軽に、でも真剣に語り合います。
今日もエコ日和

オオカミが来た


 
みどりの森
みどりの森 
デンマークは夏休み。旅行に出ている家族が多い住宅地では、通りで出会う人も、道路を通るクルマの数も少なめ。ときどき芝刈り機の音が聞こえるほかには、静けさが立ち込めていて、いつもよりもたくさんの鳥のいろいろなさえずりが空に響いています。
 
雨が続いた後に、晴れて気温が上がると、通りや広場の並木のたくさんの菩提樹の花が満開になりました。街いっぱいにかすかに甘い香りが漂っています。陽射しを受けた樹木の高いところには、何匹ものマルバチやミツバチが黄色の小さな花の蜜を集めに来ています。忙しそうに芝生の広場を飛び交うミツバチを見つけました。我が家の養蜂箱へ帰るのかな。
 

城跡の菩提樹
城跡の菩提樹
 
私の住む街には、大きな菩提樹がとても多いのです。それは、18世紀に王室が狩りのための別荘として築いた城の、水堀のある庭園にたくさんの菩提樹が植えられていたからです。デンマークの政治が王政から民主主義へ移行した激動の時代を経て、城は使われなくなって18世紀末に廃墟になりました。19世紀前半には解体されて現在の教会が建てられています。水堀のある庭園は原形をとどめたまま残り、美しい「城跡」の庭園は、街の人々の憩いの場になっています。街の歴史を伝える貴重な象徴的な存在である庭園に倣って、街の通りや広場の並木として菩提樹が植えられて、今では黄色の菩提樹の花が街に夏の香りを届けるようになりました。

 
歴史を知る大木
歴史を知る大木
 
18世紀のデンマークでは、王室は貴族や華族を招いて森で狩りを楽しみ、城で毎夜のように宴会を催していました。当時、デンマークの国土は広大な森林に覆われ、たくさんの種類の動物が棲んでいました。元来種のキツネやシカやウサギ、トビやハトなどのほかに、狩りのために王室が輸入して放したキジやニホンジカは、現在もデンマークの森に生息しています。けれども、近代の産業の発展に伴って、より大きな農地や住宅地が必要になると、樹木は切り倒されて、土地は開拓されて、デンマークの森林面積は激減し、多くの動植物の生殖が危ぶまれるようになりました。


森を抜ける街道
森を抜ける街道
 
森の植物や小動物が少なくなると、餌の不足した動物が里に近づいて、家畜を襲ったり、畑を荒らすため、困った農家や危険を感じた住民は動物を駆除せざるを得ません。デンマークでは、このようにしてオオカミが姿を消しました。
 

自然のまま
自然のまま
 
デンマークの自然の保護と環境の改善が実践から約半世紀を経て、全国の国有林では生息する植物や動物の種類や数が増えて、生来の生態系が戻りつつあります。お隣のドイツでは自然保護の取り組みが実を結び、野生動物の棲みやすい環境が戻ったので、ポーランドの森林から、いろいろな動物たちが国境を越えて移住しています。数年前には、ドイツ経由でデンマーク入りしたタヌキがユトランド半島の森で発見されて話題になりました。デンマークの元来種ではないタヌキを自然保護庁が監視しています。デンマークの自然に悪影響は無いと判断されたものの、保護対象の動物ではないので、狩りの標的になったり、農家に追い払われたり、肩身の狭い状況です。
 

いろいろな動植物の棲家
いろいろな動植物の棲家

 
最近はオオカミの移住が注目されています。森で散歩中の人が偶然にオオカミを発見しました。スマートフォンで撮ったビデオや写真では判定が難しくて、大型のシェパード犬だという推定もありました。オオカミがドイツ北部に生息していることを知っている自然保護の専門家は否定せず、動向が期待されていました。その後2-3年のうちに、オオカミの足跡や動物の死骸が発見されたほか、農家が設けた監視カメラや森の生態を観察する隠しカメラがオオカミを撮影し、2012年にデンマークへのオオカミ再来が実証されました。それでも、なかなかオオカミは人前には現れません。
 
今月初めに、ユトランド半島の西北の森に接する農場の監視カメラは、小さなオオカミの子供が両親の後をついて走る様子を撮影しました。200年前にデンマークから姿を消したオオカミの再来には、自然が回復された事実であるとして多くの人々が喜びました。一方で、家畜やペットだけでなく人々への危害を懸念する人々の声もあります。オオカミの繁殖が確認されたため、政府は国内のオオカミの生息数を制限する規定を設ける方針を発表しました。
 
ヨーロッパには1-2万匹のオオカミが生息し、そのうちドイツには約40のつがいが確認されていますが、人への危害は報告されていません。また約350匹のオオカミが数えられているスウェーデンでは、オオカミは森の奥にいて人と接触することがなく、人への危害もありません。デンマークは自然が人里に近いので、人々は被害を心配するのでしょうか。
 
自然保護団体はオオカミの再来によって、増えすぎたアカシカの生息数を抑えられると期待しています。森でアカシカを捕らえて餌に困らなければ、オオカミが家畜を襲う心配はないのだそうです。
緑の美しいデンマークの夏の森で、オオカミに出会うのは、まだまだ遠い未来です。
 

森には沼や池も
森には沼や池も




投稿者:福田さん  カテゴリー:
2017年7月14日


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2011年夏から協会に参加。省エネ担当。技術開発出身で戸惑うことが多く、右往左往しています。ミステリー、オーディオとペットとの散歩が趣味。

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