新学年新学期
北欧の夏休みは終わり、旅行に出ていた家族が自宅へ戻り、住宅地を通るクルマの数が増えました。子供達は夏休みのたくさんの楽しい思い出を、級友へ話すのを心待ちにしながら、8月12日に始まる新学年の新学期の準備をしています。
今年は暑い夏になりました。上山さんのお便りのとおり、ヨーロッパの全地域で酷暑に見舞われました。サハラ砂漠からの熱い空気が流れ込んだからだそうです。スペインやイタリア、フランスだけでなく、ドイツやベルギー、オランダでも40℃を超えて、史上最高気温を記録しました。デンマークでも記録史上の最高気温になりましたが、それでも37-38℃でとどまりました。コペンハーゲン郊外の我が家の周辺では、海に近いためかさらに低めの気温で33℃ほどなのに、人に会えば「暑いね」が挨拶代わり。北ドイツのベルリンでは42℃に達したそうで、熱風は勢力を落とさないまま、デンマークに近づいていたのです。
熱い空気が去ってしまうと、雲がかかって雨が降り、涼しくなりました。晴れて太陽の強い光が照りつけた気温32℃の日の次の日に、天気は急変して雨が降ると、気温は22℃まで下がって、寒く感じるくらいになりました。もちろん、デンマークを越えた熱風は、さらに北へ進み、ノルウェーそして北海を渡りグリーンランドへ。そのために、グリーンランドでは内陸の氷河が大量に急速に溶け出しました。こうなると、自然破壊による生態系への影響が懸念されるだけでなく、大量の冷たい水が海水に流れ込むことで、海域の大きな気象変化、さらには地球全体の気象変化が心配です。
温暖化や異常気象や生態系の変化や、多くの大きな問題が地球上に発生しているのに、自然は豊かを私たちに分け与え続け、そして、すべての私たちの活動を覆い包んでくれるのです。そういう優しい地球のために、せめて、私たちは仲良くしあって、互いを傷つけあうことなく、平和を築きたいものです。

青空のもと暑い夏休みという思い出ですが、実は、にわか雨が強く降ることが多い、不安定な天候の6週間でした。それで我が家は自転車旅行へ出られずにいました。自転車で出かけられないので、雨が多いような気がしていたのですが、太陽のほうが雨雲より力があったらしく、夏休みの間ずっと、デンマーク全国に乾燥注意報が出ていました。にわか雨くらいでは森や草地、畑が十分に潤う水量には至らないようです。
旅行へ出られないけれど、夏を楽しみたいので、それでは、海水浴に行こう!と思い立ちました。けれども、コペンハーゲン周辺の海水浴場では6月末に、気温の高い日が続いたために藻や細菌が発生して遊泳禁止と聞いていたので、地元の自治体のホームページで海水浴場の水質情報を確認。残念なことに、いつも泳ぎに行く海岸は遊泳禁止のままでした。どうやら週末に少し離れた海岸へ出かけるしかないようです。
夜間に雨が降って、暑さが和らいだ日に、もしかしたら、海の水温が下がって、水質が改善されたかもしれないと思って、海水浴場を偵察に行きました。近道をして森を通ると、地面は白っぽく、すっかり乾いていて、夏の雨不足が深刻なのだとわかります。
海岸沿いには、いくつか泳げる場所があるのですが、港の南側の海水浴場へ行きました。まだ夏休みは終わっていないのに、浜辺に来ている人は数えるほど。いつもなら、大きなタオルを敷いて日光浴をする人々で、浜辺に隙間がないほどなのに。水に入っているのは、浜辺で水をかけあう子供達と、遠浅の水につかりながら歩く若いカップルだけでした。

港には、いつもの夏と同じように、国内外からのたくさんのヨットが停泊しています。

寒中水泳のクラブの桟橋は、もちろん、夏も使えますが、誰も来ていませんでした。

自治体のホームページで遊泳可能になっている港の北側の浜では、太陽の光が底まで透き通っていて、水がきれいなのだとわかりました。それでも泳いでいる人がいません。けれども、ここは砂浜が大きくないので、浜辺で寝そべるために来る人はいないのです。

海水浴客がほとんどいない浜は、とても静かです。港でも停泊したヨット上での話し声か、ヨット競技の練習に来た子供達の遊ぶ声くらいしか聞こえません。港に立ち並んだ店の客の声も、海岸通りのクルマの騒音も、船のエンジン音も、すべては海の上の空の高いところに消失してしまったようです。そして、寄せる波と穏やかな海風が耳に残るだけです。
青い空と海の静かな時間を満喫して、「海を見に来てよかったな」と思いました。

帰り道、タオルだけを手に自転車で港へ向かう人たちとすれ違いました。きっと港の北側の海水浴場へ泳ぎに行くのでしょうね。