光を求めて
春分の日の頃から青空が広がって、晴天の明るい日が続いています。あれほど雨が降って、降り続く秋の後、さらに重たい灰色の雲が厚くかかり、地上には陽光が届かず昼間でも薄暗い冬だったのに。暖かい冬の終わりに、一ヶ月も早く地面につぼみを見せたアネモネが、春の光に誘われて白い花びらを大きく開きました。そして、ミラベラ、桜、モクレン、デンマークの春の風景は白い花でいっぱいです。
アネモネ
森のブナの若葉が開いたら、明るい楽しい季節の始まり。日本の桜前線のように、デンマークの南の地域から少しずつブナの若葉の便りが北東へ向かいます。今年は記録的な早い時期にブナの緑の葉が開いたと南の地域から知らせがあったのに、アネモネの花が咲き始めた頃に、北の国から冷たい空気が吹き込んで、デンマークの春は一歩後退。森ではまだ、空に明るい太陽の光が、アネモネの白い絨毯に輝いています。
ブナの若葉
アネモネが姿を見せて、ブナの便りが届いた頃、デンマークはコロナウィルス感染者の急激な増加を避けるために、学校閉鎖、在宅勤務要請、外出自粛、続いて国境封鎖を始めました。学校が閉鎖のうえにクラブ活動も休止で、毎日の子供達の活動が心配されていましたが、親子でサイクリング、森への散歩、犬を連れて走ったり、青空が助けてくれました。
そして3月末には夏時間が始まり、夕食時には雰囲気作りのろうそくの灯りだけ。通勤時間が要らないので、充分にある明るい時間を家族一緒にくつろげます。
庭の野花
それでも、家族訪問の自粛、10人以上の会合禁止、国内旅行でも遠出は自粛などの要項があるので、近くの海や森へも足が遠のきがちです。ところが春はすばらしいもの。ぽかぽかの庭へ出ると、いろいろな色の野草が花をつけていました。
青い花
「灯台下暗し」。黄色のアネモネを見つけました。
黄色のアネモネ
街路樹のマロニエの芽が大きく膨らんでいます。クルマの少ない道路や、空いているスーパーマーケットや、空席の多いバスや電車や、他人との接触のない状況が1か月続いたら、その状況に慣れてきてしまいました。「これでも良いかもしれない」と思い始めたところ、デンマークは少しずつ日常へ戻ることになりました。コロナウィルス感染による入院者の数が減って、減少傾向が安定してきたのです。
マロニエの芽
復活祭の休暇を終えた今日、保育園と幼稚園、そして5年生までの児童の通学が始まったのです。とはいえ、子供達は2時間おきに手洗いしたり、教室それぞれに出入口を設けたり、机は2mごとの間隔で置いたり、休校になる前とは異なる環境です。
まずは子供達から、そして順に少しずつ、社会を通常化するのですが、感染者数や入院者数が急増したり、重病患者が増えるなど、状況が変わる場合には、また休校や閉鎖へ戻すそうです。
雨雲が切れて光が地上に戻り、明るく楽しい緑の季節の兆しが感じられるようになりました。けれども、みんなで一緒に、もう少し忍耐が必要だそうです。まだまだ「感染しているかもしれない自分が周囲の人々にうつさない」ための配慮を続けないと、「自分だけなら大丈夫」と利己的な行動をしてしまうと、直ぐに感染者数と入院者数そして死亡者数が増えてしまうのです。
デンマークに明るい兆しが見えてきたのは、デンマークが北のはずれにある人口の少ない小さな国で統制が難しくないという背景があるかもしれません。けれども実は、一ヶ月前にデンマーク政府が全国の人々の活動止めて国境を封鎖した時には、EU諸国との連携があり、そしてイタリア政府や医療機関からアドバイスを受けていたのです。WHOがパンデミックとした病の蔓延を食い止めるためには、人々の一致団結と、世界の国々の協力が重要だと、多くの医療専門家や国家のリーダーが語っています。
毎日、アメリカやアフリカ、南米やアジア諸国から、悲しいニュースが絶えません。日本の様子も心配です。イタリアやスペインやフランスなどヨーロッパ諸国では、依然として厳しい状況が続いています。
光を求めて
デンマークの自宅にいても、心は世界の人々へ。
"Think globally, act locally(地球規模で考え、地域で行動しよう)"
1992年、リオ・デ・ジャネイロでのアジェンダ21の言葉を胸に。