Builder’s Voice 工務店・ガラス店の声

薬屋ではなく医者になれ(前編)

米田泰士(よねだ・やすし)
1980年生まれ。二級建築士、一級ガラス施工技能士。
昭和24年創業のヨネダ商店三代目として2003年より代表。西日本エリア屈指の売上高を誇るエコガラスのトップランナー。インターネットを駆使した機能ガラスの販売・施工事業のほか、NEDO、SII等各種の断熱リフォーム補助制度の活用に積極的に取り組む。関西リグラス温暖化対策地域協議会会員。素顔は家族思いのさわやか青年、関西のグルメ情報満載の個人ブログも魅力。


迷いの中で見つけたエコガラス

――地元で60年続くお店を、8年前から守っていらっしゃいますね。

ガラスの現場一本でやってきた父が、12年前に病で亡くなる前に残した「店を頼む」の思いを受け取りました。今は母と妻と自分の3人を中心に、一般のお客さまに向けて小さくコツコツと仕事をしています。

――31才という若さで、エコガラスの売上では常に関西エリアのトップを走っておられます。エコガラス中心の姿勢は以前から?

僕は惚れちゃってるんですね、エコガラスに(笑)こんなにええもんはないって。

店を継いだときは景気が悪く、仕事を教えてくれる父もいなくて、どうやっていけばいいのか、いつも何かを探している状況でした。
一方で防犯ガラスのブームがあり、たまたま大きな現場があった4年前に売上が関西4位になりました。そのとき出席したメーカーの式典で少し意識が変わったんです。

それまで、同業者とは「どうですか」「いやあダメです」という会話しかなかった。でもそこで出会った優秀なガラス屋さんたちは、誰一人そんなことを言わなかったんですね。

それに刺激を受けて「何か自分の店のカラーを出さないと」と思った時期にエコガラスが出回り始めて。遮熱エコガラスのサンプルを見たとき「これほどわかりやすいものはない、これで行こう」と決めました。


NEDOの補助制度に挑み、意識の高いお客さまに育てられる


「ここもうちょっとどうにかならへんの」というお客さまの声にこそ、教えてもらったことが多いです」と、屈託のない笑顔で話す。

――ご近所の割れ換えとは別に、エコガラスを扱う仕事はほぼ100%インターネット経由だそうですね。

最初はどうやってエコガラスを売ればいいのか全然わかりませんでした。いいのは実感しているのに、売り方も値段設定もわからない。
そんなときに、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の断熱リフォーム補助金制度が施行されたんです。

僕がピンポイントで売りたかったエコガラスが対象ですから、待ってましたと店のHPに情報を上げて(笑)すると3件くらいパッと問合せがあります。当時のNEDOは本当にマイナーだったので、補助金申請=決定という状況でした。

加えて、関西圏でNEDOの申請手続をやっている方がいなかった。問屋との付き合いがある何百ものガラス店の中で、ほぼうちの店だけだったんです。

――なぜ、誰もやらなかったんでしょう?

お客さまへの細かい説明とか、書類を書かなきゃいけないなどいろいろ面倒なことがある、というのがあったようですね。
僕は自宅でもエコガラスをつけていたし、そこできちんと説明できることも大きかったみたいです。

――そして、関西でNEDO利用を希望するお客さまがヨネダ商店に集まった…

そうやって来てくださるお客さまに、本当に多くを教えていただきました。
NEDOを希望される方は大抵こだわりをもってはるので、色やエコガラスの種類、工法まですでに決めているわけです。
サッシの色を額縁ではなく壁のクロスに合わせた方がいいときもあるとか、型板ガラスの窓につける内窓も透明ではなく型板にして古いガラスを見えないようにしたいとか、僕の発想にはないことをたくさん教わりました。

――お客さまに育てられて、関西のエコガラスのトップランナーになっていかれたと。

本当にそのとおりです。
ただ問題は、NEDOの制度がなくなってしまったんですよ。すでにインターネットでエコガラスしか売らなくなっていた僕はご飯が食べていけない(笑)これはどうしたものかと。


道しるべとなる師との出会い、"100%お客さま目線"のスタイルを確立

「工事内容を決めているお客さまにも、一からもう一度説明を聞いてみてください、違ったものが出てくるかも、と話します」
ガラスや窓関連の他、創業からの金物販売も「できる範囲で」続けているヨネダ商店。地域でも頼りにされる存在だ。

――そんな折り、師と仰ぐ人にめぐり会われた。

旭建硝の中西繁樹さんの講演を聞いたとき「あそこに立っているのは未来のオレや」と(笑)めざすべき道はあそこにある、と思ったんです。

――一般のお客さまを対象に、エコガラスを中心にインターネットで集客して成功されている東京のガラス屋さんですね。

そうです。しかも講演では、環境省が地域協議会経由でおこなう断熱リフォーム向けの補助事業についても話をされました。
その場で名刺交換させてもらい、後日お店を訪ねて、半日くらい思いのたけをしゃべり続けました。
自分が作ったHPを見せ、完膚なきまでに論破されて(笑)

そこで教わったのが「お客さまの悩みにお客さまの目線でこたえて解決することが僕らの仕事だ」という考え方です。100%お客さまの目線でとことんやって、最後までそれを貫く…自分の中でそう決めて今に至る、そういう感じですね。

――具体的には、どのようなお仕事ぶりでしょうか。

たとえば見積でお邪魔するときは、エコガラスのサンプルなど持てる限りのものを持ち、すごい荷物でいきます。それを外に置いてお客さまに説明し、質問が出たら答えるためのものを取りにいってまた話す。2時間くらい出たり入ったりして説明します。

工事後に問題が出てきたときも、とことんやります。
以前、建物の湿度が高すぎてエコガラスでも結露が止まらなかったお宅がありました。
お客さまと一緒に話し合い、いろいろ調査もし、2ヶ月かけて窓が原因ではないことを確認しました。
そのとき、お客さまが最後に言ってくださったんです。「誠意を見せてもらい、100%お客さま目線という君の言葉を実感して納得した。これからは誰に対してもヨネダ商店が一番だと宣伝させてもらう」。
涙が出るほどうれしかったですね。

――"ヨネダ商店のウリは商品の値引きではなく米田さんご自身"だそうですが、お客さまの言葉の中にその意味が透けて見えるようです。

お客さまの方を向き、お客さまのために仕事をするのは当たり前なんです。でも、そのことをお客さま自身に感じてもらえなかったら、それは僕の考える"100%お客さま目線"にはなっていない。

お客さまに100%信頼してもらえたとき、そこには"値段ではないもの"が生まれる。そう思っているんですよ。


取材・文:二階幸恵
撮影:中谷正人


株式会社ヨネダ商店
株式会社ヨネダ商店
兵庫県西宮市
社員数 3名
建築金物及び土木資材販売、ガラス工事・サッシ工事の設計施工及び販売、エクステリア・外構商品の販売及び施工、錠前その他防犯商品の販売及び施工、リフォーム業

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