Builder’s Voice 工務店・ガラス店の声

「ウィコン」の誇り(前編)

田端 隆(たばた・たかし)
1972年生まれ。大学卒業後、建材販売会社での修行を経て1997年より家業に携わる。2008年、法人化とともに代表取締役に就任。
若いスタッフとともに、サービス業としての徹底したスタンス、OBのファンクラブ制度創設など、常に業界の常識を打ち破る試みに挑戦。窓のプロとしてのプライドと謙譲の精神を兼ね備えた誠実な提案を実践するウィンドウ・コンサルタント(窓の相談役)として、顧客から厚い信頼を寄せられている。<自分自身も商品の一部>として肉体改造やHPその他での頻繁な露出もいとわない厳しさと、スタッフに対するこまやかな気遣いが同居する、繊細にして強靭な経営魂の人。2級建築施工管理技士(仕上)、福祉住環境コーディネーター、セキュリティアドバイザー、システムアドミニストレーター。


異業種交流会をきっかけに「不安な二代目」から経営者へ脱皮

職人ではなくサービス業として動きたい、そのために旧社名をカタカナ表記の屋号<タバタサッシ>と変え、新たに法人名<T3>を持ったと語る。その上で、創業者である父の仕事を汚すことは二代目として絶対できない、とも。柔らかで優しげな物腰の奥に強い意思がひそむ

――25歳で修業先から戻り、創業者のお父様を助けてお店を続けられました。

いずれ自分が継ぐのだろうな、と漠然と思う程度で、家業に対する夢や希望はとくに持っていなかったんです(笑)もとは建具屋さんに務めていた父が大垣で一番最初に始めたガラス・サッシ店らしいのですが。

戻ってきたときの主要なお客さまは大きなゼネコンさんばかり。あとは無数の一般顧客様に助けられる状態でした。
<がんばる>といったら安くするしかないような時代で、価格面でサッシ屋さん同士が争ったり、先行きまずいなあと思っていても、どうやってがんばればいいのかわからず…とても不安でしたね。

僕を大きく変えてくれたのは、35歳のときに参加した地元の異業種交流会です。
まるっきり違う業界のデフォルトを見させてもらいました。そのとき言われたのが「ダメな理由を全部まわりのせいにしているのが一番ダメ」。

酔った勢いでつい「うちの業界お先真っ暗ですよ」みたいなことを言ってしまったんですよ。そうしたら「自分の業界と言うけど、じゃあ田端君は何%のシェアを持っとんのや。それは君の業界なんか?」ってお叱りを受けて。
君の業界でも十分儲かってるし、がんばっているところもあるんだぞ、と教えてもらいました。

――ガラス・サッシ業界以外の世界にある目線や考え方を知った、と。

先が明るい業界なんてない、という話もされました。「明るくないところでも、みんな自分の道をライトで照らしながらやっているんだよ」って。

そうやって教えていただいたことがきっかけで、自分がどんどん変わっていきました。
会社は何のために経営しているのか? というようなレベルからスタートし、そこから初めて、経営者としての第一歩を踏み出した気がします。


売るのは<悩みから解放された暮らし>

事務所脇の工場にはエコガラス。新築の仕事でも常にエコガラス採用を勧奨するという。「エコガラスはとにかくものがいいですから。2005年くらいからやっていますが、当時は今ほど普及していなくてゼネコンさんにも重宝がられました」
インターネット社会を、小さい会社が仕事しやすい環境と考える。「お客さまが、自分のために一番親身になってくれるところはどこだろうって検索するとき、100人の会社でもふたりしかいない会社でも関係ないでしょう?」こぢんまりとかわいらしい事務所を支えるのは、少数精鋭4人のスタッフだ

――エコガラスの取り扱いは、お仕事全体でどれくらいですか。

体感からいうと9割の仕事で、エコガラスや防音ガラスなどの高機能ガラスを使っています。リフォームだけでなく新築でも、すべてエコガラスをお勧めしていますから。

エコガラスが出始めた頃、実は「こんな高いものはよう売らん」と思っていたんですよ(笑)
でもよく言われるように、売れないって思っている人から買う人はいない。その商品に自分が惚れ込んで特徴を知ったら、結露や寒さで困っている人にこれを勧めない方がプロとしてルール違反だと、今では痛感しています。

エコガラスは、お悩みに対するベストな解決として常に提案します。
値段は張るけれど、その価格はガラスに対してではなく<毎日の結露拭きに要する時間や寒さによるストレスから解放されること>に対して使われるお金なんですね。

いいモノを売ろうと思えばどうしてもモノの説明になってしまいます。そうではなく、モノを入れると暮らしがどう変わるか、が一番大事。弊社の経営理念のひとつでもあります。

――物質ではなく、それを通してお客さまが獲得する快適さや時間こそが商品、という考え方ですね。

ニーズを先に聞き、それに対して「じゃあこの商品はどうですか」。
まずは悩みからの解放を考え、あとはプラスαで結露や暑さ寒さについてもうかがって、それやったらいいガラスがあるからどう? ともっていく。
この流れの中では、エコガラスを始めとする高機能ガラスは欠かせません。

お客さまが持ち込まれる問題や悩みに対して、10社あれば10通りの提案がある。その中で一番いい提案をすることで選ばれる会社であればいい、と思っているんです。


肩書きはウィコン=ウィンドウ・コンサルタント

色刷りに顔写真を入れたタウンページ広告。リフォームではなくアルミ建材のカテゴリーで掲載している。「スタッフの顔を出しているのはうちだけ、ということでご連絡いただけることが多いかな」電話をかける側への気配りが奏効する例
向かいにレストランチェーンの駐車場が広がる会社のロケーションも考慮し、大きな看板で業務内容をアピール。「ふらっと入ってきて、小さい修理工事や部品を依頼される方もいますよ」
エコガラスをお客さまに勧めるとき、単板ガラスとの価格差を聞かれるとつらい、と笑う。「普通のガラスの安さをご存じないので。ガラス1枚10万円と思うと高いけれど、そうではなくて悩みを解決するための10万円なんですよね」

―― 一般のお客さまは、多くがエコリフォームのご希望ですか。

最近はHPからも増えましたが、ちょっと前まではタウンページを見てご連絡くださるお客さまも多かったんです。
そういう方はどちらかというと緊急性が高くて<壊れちゃったから、開かなくなっちゃったから、元に戻してほしい>方。
性能アップよりも修理を希望されるお客さまです。

ただ、そこで呼んでいただいたときに、相手の想像以上のことをする業者さんは印象に残りますよね。

直すだけでなく「ここビス一本打っときますね」と言える、他の箇所へのアドバイスもできる。そんな仕事の仕方なら、また頼むわって言ってもらえる。
網戸の修理にうかがったお客さまから、終了後のアンケートで「結露対策でいつかは二重窓を考えたい、そのときはよろしく」と言っていただいたこともあります。

――かかりつけのお医者さんのようですね。

例えばこのお客さまに<寒さ対策の工事は今がお得です>といったDMを見ていただけたら、見積だけでもとってみようか、という話になるかもしれません。
お年を召して、だんだん不便になる暮らしを改善したいと考える方も多いので、息子のように親身になって接して差し上げるように、とも心がけています

――自ら<ウィンドウ・コンサルタント>を名乗っておられます。

ウィコン、と言っています、かわいいでしょ(笑)
アメリカ人のお客さまに、サッシ屋って英語でなんていうのかお聞きしたら「君の場合はなんでも相談できるからコンサル、ウィンドウ・コンサルタントでいいんじゃないか」と言われて、それ以来です。

窓の相談役ですね。悩み、困っている方に対して、プロのプライドを持ってコンサルティングをする。窓の<暑い・寒い・うるさい・こわい>の解決策としてベストな提案をする存在と定義づけています。

すごく勉強されているお客さまが多いのですが、インターネットでいろんなHPやエコガラスの商材を山ほど見て、頭でっかちになられている方も少なくありません。
それを否定せず、でも打ち消すところは打ち消して、プロとして最高の提案をして差し上げる。結論はお客さまにゆだねますが。

最終的に「いやあ君の言った通りだね」って言っていただけるのが、ものすごくありがたいです。(後編に続く)


取材日:2013年12月7日
聞き手:二階幸恵
撮影:中谷正人

田端 隆さん(後編)<自分がいないと困る>誰かのために 3月1日掲載予定
タバタサッシ(株式会社T3)
タバタサッシ(株式会社T3)
岐阜県大垣市
社員数 4名
事業内容/ガラス・サッシ工事/結露・断熱・防音・防犯リフォーム工事/窓・開口部関連の商品販売・施工/窓に関するコンサルティング

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