工務店・ガラス店のみなさま/スペシャルインタビュー

女性ならではの“丁寧さ”を武器に

青木 和壽(あおき・かずとし)

1963年生まれ。大学で建築を修めた後、1985年建設会社に入社。1991年より東京都内の建築設計事務所で建築設計業務全般に従事し、1999年和建築設計事務所を設立。2000年故郷の長野県塩尻市に事務所を移転、現在に至る。

高い問題意識に基づく学究的姿勢と、社会における建築士の使命・立ち位置に対する矜持が印象的。近年の設計業務では東京都内の非住宅建築物も多く手がける。また2008年から現在まで、長野県産材であるカラマツやスギ・ヒノキ等を素材とする建材の研究・開発に継続して取り組んでいる。木製サッシを使った超断熱窓の特許取得のほか、外装材開発による防火・耐火構造壁の国土交通省大臣認定多数。
ほかに木質外被の研究開発・販路開拓を行う『木質外被研究開発プラットフォーム』プロデューサーとして地域の林業再生・循環社会構築推進活動を牽引、各種シンポジウムや地域講座にも奔走。一級建築士

寒さ厳しい信州で“暖かくする”を念頭に設計

東京の建築設計事務所で10年勤めた後、故郷の長野県で独立されました。信州という土地で住宅や建物の設計を行う前提はなんでしょう。

冬の寒さにどう対応していくかですね。室内の構成から窓の向きまで、暖かくすることを考えます。

事務所設立当初から、窓は高断熱の木製サッシを使ってきました。長野県は結露が大問題なので。
それから、薪ストーブをなるべく室内の真ん中に置くようにします。薪ストーブって圧倒的に発熱量が多くて、それが見える場所は基本的に暖かいんですよ。県からは補助金も出ています。

また、建物の外も内も木を多く使います。長野は森林県ですが、木材県ではなくて、使い切れていないんです。産業として使えるようにしたいですね。

性能を確保した上で、意匠設計に入るのでしょうか。

いえ、基本はデザインやプランニングで、数値はその後です。

住宅の設計では、お施主さんにオリジナルのアンケートを書いてもらいます。趣味の内容から持っている靴の数まで、プライベートなことも全部わかるようなものですね。
それを読み込むことで“どんな家をつくりたいのか”を組み上げ、そこからデザイン・機能・コスト・メンテナンス面まで掘り下げていきます。

性能よりデザインやコストが優先される場合もありますか。

お施主さんは、数百万円のサッシでも「青木さん、予算を削ってもこの窓は残してね」とおっしゃいますよ。

こちらが強制しなくても、住まい手自ら「これを使わないとダメだよね」と言っていただけるまで、丁寧に説明します。
きちんと話し続けていくと、竣工の頃にはお施主さんは“プロ”になるんです。室内環境の調整やメンテナンスも、使う人が自分の手でどうにかできるようになります、工務店さんと一緒に。

その土地にあった家を住みこなすために、必要な知識・考え方・技術を住まい手が身につける。そのサポートもしておられるのですね。

技術と徳を両輪に-詳細写真01

たくさんの窓に囲まれた会議室でお話をうかがった。塩尻市内の中心部に位置しながらも緑多く閑静な環境

技術と徳を両輪に-詳細写真02

ウェスタンレッドシダーを多用した事務所空間は、優美な曲線を描く高い天井にも目を奪われる

技術と徳を両輪に-詳細写真03

南面を埋める窓は、住宅設計などに採用してきた輸入品の高断熱窓。型番変更時にまとめ買いしたものの一部を使ったという。サッシの外側は樹脂だが、室内から見えるのは木のテクスチャーのみ。庇部分に屋根の半分を覆う太陽光発電パネルの端部が見える。10kWhの発電量を確保し、事務所及び隣接する自宅での消費エネルギーをすべてまかなっている

ないなら創る 木曽ヒノキと4枚ガラスで超断熱サッシを開発

窓まわりはどのように考えて計画・構成されますか。

デザイン面では、数を奇数割りにします。
理由は、誰もあまりやっていない(笑)のと、窓には“外を見る”と“換気”のふたつの機能があるので、見るための窓の両脇に換気用の小さめの窓を2枚つけて3枚になる。そんな感じですね。

性能面では、気密が悪い引き違い窓は絶対使いません。外すべり出しやオーニング、内倒しや内開き窓が多いかな。

サッシは木製が基本です。見て感じがいいのに加えて表面結露が防げるので。複合サッシも使いますが、室内側からアルミや樹脂が見えないものにします。

ガラスについては。

Low-Eやトリプルガラスの入った輸入もののサッシを使ってきました。
が、2012年に長野県産ヒノキ材のサッシにクリプトンガス入3層ガラスをはめた、U値0.8の断熱窓を県内の木工会社と一緒に開発しました。

2014年には信州大学との共同研究で、同じく県産の木曽ヒノキ材サッシにLow-Eガラス3枚フロートガラス1枚の計4枚のガラスにクリプトンガスを充填した、U値0.47の超断熱サッシを創りました。環境省の委託を受けての開発です。

求める性能と意匠を持った窓は自分で創って使う、と。

「ないのなら、創っちゃえ」と(笑)

「なぜ日本には木製サッシがないのだろう」と、窓やガラスについて本気で調べ始めたのがきっかけです。
それまで国内では4枚ガラスの窓は製造できなかったのですが、2012年に千曲市の建具会社がドイツ製の加工機械を導入し、開発が実現しました。

設計にあたって足りないものがあるなら、自分で動いて海外でもどこでも行き、いろいろな情報を得て創る。最近の設計士はこういうことをあまりやっていない気がします。
なければ自分で創ればいいんですよ。

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事務所の壁に掛けられた木製サッシの研究モデル。「木曽ヒノキは類似した材がなく、性能は世界的に見てもトップクラスです」

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クリプトンガスを充填した4枚のガラスと木曽ヒノキのサッシで構成されるU値0.47の超断熱サッシ窓は、2017年に特許登録された

みんなで自由に使いたいから。国産木建材の防耐火認定に注力

ガラス以外にも、長野県産のカラマツ無垢材を外装材仕様としたCLT準耐火構造壁の開発などで多くの国交省大臣認定を取っておられます。

40件くらいでしょうか。認定にはお金もかかりますが、すべて科学研究費助成を受けてやっています。

防耐火の面で多くの規制や縛りがある国内の木造建築の現状を変え得る開発ですね。

建材のいいなりにならずに設計ができるようになりますよね。木材をフリーで使いたい、早く自由にしてあげたいんです。

大臣認定の建材は、本来誰でも使えるものなのです。地域資源である国産木材をみんなで使い、活用していくために制限を取り払う。ここにやりがいを感じています。

設計者というより、研究者のようです。

研究と設計は8:2くらいじゃないかな(笑)今後も、残っている課題に対して取り組んでいくつもりです。

僕は自分のことを“建築家”とは言いません。作品と呼べるものもないし、定義がわからないから。
建築士として国民社会のために働くことが使命だと思う。これからもそれだけを守っていきます。

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事務所入口には開発してきた断熱サッシが展示され、訪れる人を真っ先に迎える

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灯る明かりが美しい事務所の標高は約700m。この日の塩尻市は雨が降り、翌日は雪に変わる寒さだったが、日没後も室内で冷えを感じることはなかった

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参加しているグループは地元長野県の県産材や自然エネルギー関連が主で、いくつもある建築士団体には属さない。「一緒にやるメリットがとくにないですから」と屈託なく笑った

取材日2019年3月10日
取材・文二階さちえ
撮影中谷正人
有限会社 和建築設計事務所
社名
有限会社 和建築設計事務所
URL
http://www.kazu-design.co.jp/
住所
長野県塩尻市
社員数
3名
事業内容
事業内容 建築設計、監理及び都市計画に関する企画、調査、設計、監理/家具調度品、玩具の研究開発、設計並びに販売/建築資材の研究開発並びに販売/建築に関する資料の調査、研究並びに書籍の出版/全各号に付帯する一切の業務
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