工務店・ガラス店のみなさま/スペシャルインタビュー

“御用聞き”を重ねて自社ブランドのエコガラスを開発

近江 朋秀(おうみ・ともひで)

1964年生まれ。愛知県出身。1989年、仲間とともにあけぼの通商を設立。生活用品の営業・販売業務を経て25年前から住宅向け複層ガラスを扱う。ガラスメーカーとのパートナーシップの下で機能性ガラスの開発に取り組み、2002年より自社開発のエコガラス『あんみつガラス』販売開始。高断熱高気密性能のほか、耐熱強化・防犯・内窓を含むシリーズとして網羅し、販売から施工まで一貫して行っている。
1993年~2006年日本板硝子『ガラスグランプリ』金賞第1位(13年連続)、2014年~2018年日本板硝子『スペーシア全国セールスマラソン』全国賞銀賞・優秀賞受賞、2006年~2017年旭硝子『リグラスカップ』全国第1位(12年連続)。

異業種参入ならではの経験とアイデンティティに誇りを持ち、高いホスピタリティ精神に基づいて提供するサービスは多くの顧客から高い評価を獲得。過去の慣習や業界の常識にとらわれることなく、「お客さまの笑顔」をよりどころに信州から全国を相手に独自のビジネスモデルを実践し続ける。

結露に悩む長野県民の声を聞き、エコガラスの世界へ

故郷の愛知から、新天地である長野県上田市に会社を設立されました。

当時は何もない土地でしたが、長野オリンピック開催を前提に高速道路や新幹線の計画ができていました。全国に向いた商売をしようという思いでここを選んだのです。
当初は建築とは関係のない日用品を販売し、その後もさまざまなことをやりました。

なぜ、住宅向けの窓ガラスを?

きっかけはお客さまの要望です。
ボイラーメーカーの下請けでユニットバスの交換工事をしたとき、お施主さんが「窓ガラスを複層にしたいんだけど、どうしたらいいだろう」と話されました。たまたま事務所の隣にあったサッシ屋さんに聞いてみたら、すぐに交換できたんです。

寒い長野県では、窓はすぐ結露してみんなが困っています。なのに複層ガラスが売られていなかった。どうして? これこそ商機だと考えて、すぐ社内に提案しました。
でも最初は全員から「売れるわけない」って反対されてね(笑)あきらめずに、事務員とふたりで始めました。

今は国内5エリアに営業所を置き、他地域では代理店を通して、エコガラスをはじめとする自社開発製品の販売・施工サービスを全国展開しておられます。

会社設立時の生活用品販売で取引があったご縁で、全国のJAさんや生協さんを窓口にしています。
フリーダイヤルでは、お問い合わせくださったお客さまのお悩みをうかがいながら全国のJAや生協で開催している展示会のことなどもお知らせし、できるだけ多くの情報を提供しています。

各地の営業所で働くスタッフの方々の仕事ぶりが気になりますね。

全社員との個人面談を年に2~3回やっています。仕事の状況や悩みについて話してもらうほか、社員からの提案も聞きますね。マンネリが一番こわいですから。
自分が考えていることを伝えるのは、毎週月曜日の朝礼です。ほかに本社勤務の営業社員とは毎日何かしら話をするようにしています。

“御用聞き”を重ねて自社ブランドのエコガラスを開発-詳細写真01

エコガラスの大きな窓がある応接室でお話をうかがった。ガラスは光触媒で防汚加工が施され「5年間拭き掃除をしなくても問題ないです」

“御用聞き”を重ねて自社ブランドのエコガラスを開発-詳細写真02

全国からの問い合わせをフリーダイヤルを受けるのがこのスペース。奥でスタッフミーティングが行われていた。張られていたポスターは日本が誇る怪獣スターとのコラボレーション

“御用聞き”を重ねて自社ブランドのエコガラスを開発-詳細写真03

本社廊下の開口には、各メーカーの異なる種類のガラスがはめこまれていた。右下に室内外の気温計も見える

自社開発エコガラス『あんみつガラス』ができるまで

自社開発のエコガラス『あんみつガラス』についてお聞かせください。

22年ほど前、真空ガラスを試作販売させていただいたときからエコガラスに関わってきました。
真空ガラスとの出合いがなかったら、今の会社はないですね。

最初のエコガラス設置依頼は、長野県のお客さまからでした。とても喜んでいただきましたが、当時はメーカーさんの製造拠点が少なく、その後の仕入れが難しかったのです。
そこで直接交渉し、県内の工場でもエコガラスを製造してもらえることになりました。

これ以降、お客さまからは「もっと性能が高いものがほしい」との要望が多く寄せられました。それでも仕入れ困難な状況が続いたため、思いきってメーカーさんとのパートナーシップ体制での自社開発に踏み切ったのです。

10mmの中間層にアルゴンガスを封入したLow-Eガラスを基本に、ガラス交換後にアタッチメントが網戸にあたらないよう薄く加工しました。また、防犯上の工夫としてアタッチメントの幅を広くし、外側からクレセントが見えないようにしています。サブロックもつけました。

あんみつガラスは中間層が真空の商品や、耐熱強化ガラスや防犯ガラスとLow-Eガラスを組み合わせたものなど、断熱以外の性能も付加した一連のラインナップで構成されています。
しかもリフォームに特化しているそうですね。

はい、新築の案件には卸していません。
ゼネコンや建築設計士の方から「あんみつガラスを使いたい」とのお声をいただくこともあるのですが、やはり一般のお客さまの悩みにコツコツと答えていきたい。そんな思いで、リフォームのみに対応しています。

“御用聞き”を重ねて自社ブランドのエコガラスを開発-詳細写真04

本社2階フロアは常設の展示場にしつらえられ、あけぼの通商の全取扱製品を見ることができる。中央にはあんみつガラスシリーズがずらり。サッシはすべて独自に型から起こして開発した

“御用聞き”を重ねて自社ブランドのエコガラスを開発-詳細写真05

おなじみのデモ機にもオリジナルの工夫が。上部に電球のスイッチをつけて使い勝手をよくし、さらに女性でも片手で持てるよう軽量化が図られた

“御用聞き”を重ねて自社ブランドのエコガラスを開発-詳細写真06

あんみつガラスシリーズののハイエンドモデル『あんみつプレミアム』は、真空ガラスとLow-Eガラスの組み合わせによって断熱性能を著しく向上させている

全国展開しつつ地元に根ざし「喜んでもらえる仕事を」

お客さまの要望を第一とする中、提案はどのように?

提案だけは毎回、させていただいています。“安かろう悪かろう”ではなく、本当に良いものを。場合によってはサッシごと交換をお勧めすることもあります。

社員にいつも言っているのは「他人の家と思うな、自分の家だと思った時にどんな家に住みたいかを考えよ」。
結露対策だけでなく、開け閉めが重いならサッシを新しくしたら? とか、合わせて壁や床を断熱すると省エネになりますよ、など、ひとつの悩みに常に2~3をプラスして提案しています。

顧客属性に傾向はありますか。

60代から70代の方だけでなく、20代30代のお客さまもおられます。中古住宅を買ったら寒かったのでなんとかしたい、とか。

“若い世代はお金がないから提案しても意味がない”と考える方もいますが、そんなことはないんですよ。以前、20代のご夫婦に大きなエコリフォームをお勧めしたら、おじいちゃんがお金を出して全部の工事をさせていただいたことがありました。
見た目で判断してはいけないんです。

その一方で、10年もコツコツ年金を貯金して「やっと貯まったからあんみつガラスを買うよ」と言ってきてくださるお客さまもいる。本当にうれしいですね。そういうお客さまは、家じゅう全部の窓をリフォームしてくださるんです。
そんなときは営業を叱ります。なぜ10年も放っておいたのかと。

予算が合わないなら無理していただかなくていい。ひと窓からでもいいんです。

地元の長野県では、あんみつガラスを指定したご依頼も多いとのこと。自社ブランドとして確立されていますね。

新聞の折込やポスティング、CMなどでPRしています。県内ではメーカーさんと共同でつくったテレビ番組やCMをずっと流し続けているのが、功を奏しているのかもしれません。

それから“お茶飲み”ですね。

信州には、午後3時くらいになると漬物や煮物を持ち寄ってご近所みんなでお茶を飲む習慣があります。その時間に営業で回っていると必ず声をかけられる、「お茶飲みしていけ」とね。
東京あたりではなかなか見ない、良い習慣だと思います。

そこでの雑談の中で、結露や寒さの困りごとがぽろっと出てくるんです。「あの家はこうだよ」「実はうちもそうなの」といった話とか。だから営業には「お茶飲みも大事な仕事だぞ」と言っています。

全国展開と、地域の生活文化に根づいたご商売。対照的な両輪の実践ですね。

どちらもお客さまの求めるものを提案していくという面では同じです。
御用聞きをしながら、最終的にお客さまが笑顔になることが前提。「エコガラスに変えてよかった」そう思ったとき、お客さまは値段を忘れます。
これからも困っておられることにお答えし、喜んでもらえる仕事を続けていきたいですね。

“御用聞き”を重ねて自社ブランドのエコガラスを開発-詳細写真07

「結露する期間が短い暖かい土地では経費バランスが合わない」として九州エリアの直営窓口を引き上げるなどシビアな経営感覚を持つ一方で、全国の同業者が置かれた厳しい状況を憂う。「跡継ぎもいなくて、今後どうするか悩んでいる小さなお店がたくさんあります。メーカーは末端の販売店にもっと目を向け、話を聞いてほしいと思いますね」

“御用聞き”を重ねて自社ブランドのエコガラスを開発-詳細写真08

上田市は沖縄を除く日本列島のほぼ中央に位置する。ここから全国に向けて仕事をする際、辛いのは言葉の壁だという。「地方によってはなかなか通じ合えなかったり、フリーダイヤルで違和感を覚えたお客さまからどこにかかっているか聞かれ、上田と伝えると驚かれたりします」

“御用聞き”を重ねて自社ブランドのエコガラスを開発-詳細写真08

本社エントランスは2階まで吹き抜けで、壁に張られた色ガラスとともにCMを流すモニターや、頭上に立つゴジラのぬいぐるみが来訪者を迎える。展示場は年に2回開放されるほか、随時予約を受け付けて見学してもらっている

取材日2019年3月11日
取材・文二階さちえ
撮影中谷正人
株式会社あけぼの通商
社名
株式会社あけぼの通商
URL
https://www.anmitsuglass.co.jp/
住所
長野県上田市(本社)
社員数
社員数38名
事業内容
オリジナル・ブランドの『あんみつガラス』をはじめ、住宅関連商品の販売及び取付
エコガラス