工務店・ガラス店のみなさま/スペシャルインタビュー

窓がつくるのは人と地域の関係性

小澤祐二(おざわ・ゆうじ)

1983年生まれ。国立豊田工業高等専門学校、武蔵野美術大学建築学科卒業後、山本理顕設計工場を経て、2015年藤木俊大、佐屋香織、佐治卓と共にピークスタジオを共同設立。『南三陸町役場庁舎・歌津公民館』で2018年GoodLightning Award・日経ニューオフィス賞/東北ニューオフィス奨励賞・グッドデザイン賞・ウッドデザイン賞受賞。2019年同役場庁舎で日事連建築賞奨励賞受賞。同年『森と自然の保育園SORA』でキッズデザイン賞受賞。

明朗闊達さと誠実な人柄が誰にも愛され、クライアントの信頼は厚い。「一歩ずつ、山に登るように建築をつくりたい」というメンバーの思いをそのまま表現した事務所名に見られる通り、趣味は登山・トレイルランニング・自転車など。
2015年明治大学建築学科ゲストクリティーク、2018年より武蔵野美術大学非常勤講師。

新築からエリアデザインまで、クライアントとともに

南三陸町役場庁舎・歌津公民館で、多くの賞を受賞されましたね。

前職で同僚だった4人でプロポーザルコンペに参加しました。その後法人化して、今のピークスタジオになりました。
公共建築の設計からスタートした設計事務所です。

現在の業務内容は?

個人住宅や集合住宅、福祉施設、保育園などさまざまな用途の設計を行うほか、インテリアや家具デザイン、また事務所のある武蔵新城エリアのまちづくりにも関与しています。地域のイメージづくりやサイン計画をしたり、お店のロゴデザインやフライヤー制作の依頼などもありますよ。
地域の設計事務所として期待していただいているようです。

設計では、各クライアントそれぞれの違った価値観やライフスタイルに応じて提案することを楽しんでいます。
クライアントと一緒にプロジェクトに取り組んでひとつの山に登る。そんな意識を大事にしています。

窓がつくるのは人と地域の関係性-詳細写真01

仕事の合間を縫い、現場近くでお話をうかがった

窓がつくるのは人と地域の関係性-詳細写真02

設計を手掛けた珈琲焙煎店では、前面道路に沿って続く大きな横連窓ファサードデザインを構成している

窓がつくるのは人と地域の関係性-詳細写真03

焙煎店内部にはカフェを併設。三角形の敷地形状を生かした平面と厨房上部に切られた天窓が特徴的な、居心地の良い空間だ

内と外を仕切るのでなく、つなげる。それが窓

建築設計という仕事の基本に何をおいていますか。

建築が地域や社会とどうつながるか。外との関係性を考えています。その上で建築としての骨格をしっかりつくり、ディテールを決めていきます。

窓は“外との関係性をつくる境界”としての役割を持っていると思います。内と外を仕切るのでなく、つなげる存在。

光や風、景色を取り込むだけではなく、窓の形や大きさ、配置によって地域や社会との関係性をつくりたいと考えています。

ピークスタジオでは、建築の骨格をフレーム的に“閉じる/開く”を明確にし、この中でどういった開口部とするかを考えます。
長野市の住宅『N邸』では、トップライトやバルコニーなど屋根の開口部を大きくつくり、日射を確保しつつ風が抜け、山並みや星空を望むことができます。住宅全体ができるだけ外部とふれあい、関係する住まいにしたいと考えました。

N邸ではすべての窓でエコガラスを採用されました。建物や開口部の環境性能についてはどのようなお考えを?

地域によって差が出るので、それぞれの気候風土に対応したつくり方、地域性に合わせた断熱性能や仕様が必要です。
N邸は外皮に対して開口部は少ないものの、それ自体が大きかったり、天窓が多いなど季節によって熱負荷が大きくなるため、エコガラスを採用しました。

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自らの事務所もまた、地域に開いている。築50年のマンションの1階を改装しオフィスとした。出入りは玄関ドアではなく、前面道路に向いたテラスの掃き出し窓から

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リビングの南面中央に大開口を配置、上部は吹き抜けにし、差し向かいとなる北面には天窓がつけられ、明るさと開放感がある。一方、両脇のキッチンやリビングのテレビスペースは壁を立てて閉じることで、メリハリをつくっている

過去のあり方を壊す建築が人を変え、窓は人と地域の関係性をつくる

現代の建築設計者には何が求められていると思われますか。

設計を依頼してくださるクライアントや、まちづくりに関わる人々など地域に対する意識の高い人が周囲に多く、いつも勉強させてもらっています。
そんな方々と関わる中で見えてくる、暮らし方や働き方、都市空間に対する疑問を“建築として再構築すること”でしょうか。

既存の建築の構成を再構築すると、見る人使う人の価値観が変わります。

具体的にはどのように?

例えば、横浜市のマンションの1階に設計した保育園では、前面道路に面した部分に地域に向けて開放したスペースを設けました。
この“地域交流スペース”は、朝晩は子どもたちを送迎するエントランス、日中は地域の人が立ち寄れるサロン、そしてイベント時には保育室と一体利用できるステージとなり、保育と地域をつなぐ場所となります。
保育を地域社会から乖離させない建築をめざしました。
園児たちにもまちを知ってほしいとの思いで、壁には周辺のまちなみマップをクライアントとともに描いています。

地域との関わりを大切にしながら、ソフトとしてどう使いこなすかを、クライアントと一緒に考えていく。つくったら終わりではなく、できあがった後も関わり続けていきます。

その中で、窓が担う役割は。

窓は、そのつくり方で地域社会との関係性が生まれます。光や風、景色を取り込むことに加えて、人の関係性をつくる重要な建築の要素だと思うんですよ。

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建築が完成した後も施主との関係は続いていく

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N邸の2階にある3つの居室には、同じ大きさで同一の直線上に並ぶ室内窓が5箇所ある。すべて開けると東端の主寝室からリビングの吹き抜け、サンルームを経て西端の子ども室まで見通すことができる。窓を操ることで不思議な奥行き感が生まれた

取材日2019年9月10日
取材・文二階さちえ
撮影中谷正人
株式会社あけぼの通商
社名
ピークスタジオ 一級建築士事務所
URL
http://peak-studio.net/
住所
神奈川県川崎市
社員数
4名
事業内容
建築設計・監理/リノベーション/まちづくり/インテリア・家具・グラフィックデザイン
エコガラス