事例紹介/リフォーム

内窓はしゃれた奥行きと安心感
使いこなしてパッシブに暮らす

東京都 M邸

Profile Data
立地東京都杉並区
住宅形態RC造3階建マンション
(1996年竣工)
リフォーム工期2018年1月(2日間)
窓リフォームに
使用した主なガラス
アルゴンガス入り
エコガラス(内窓)・真空ガラス

転居したマンションは窓の変更不可… 内窓設置にシフト

都心にありながら落ち着いた雰囲気ある真夏の住宅街に、M邸を訪ねました。
3階建分譲マンション・2LD+和室の上階住戸で、すべての窓をエコリフォームしています。

ご夫婦が暮らす住まいは白壁に無垢板の床材が張られ、明るくシンプルな内装。笑顔で迎えてくれたMさんは、神奈川県内の高層マンション最上階から2017年にここに転居しました。

入居後すぐに室内リフォームを済ませたといいます。
集合住宅外住戸の「夏暑くて冬寒い」特徴を身をもって知っていたご夫妻は、窓の断熱性能についてもよくご存知で「結露や寒さを防ぐために本当はサッシごと換えたいと思っていました。けれど、共用部だからと管理組合の許可が出なかった」

やむを得ず大工さんと相談し、窓まわりに内窓設置用の木枠をつけることに。リフォーム工事と並行しながらあちこちのショールームを回り、納得のいく内窓用サッシを探しました。

そしてお気に入りの製品を見つけ、それに合わせて枠を取りつける木工事をしたのです。
先を見越した、効率的な窓リフォームといえるでしょう。

内窓はしゃれた奥行きと安心感 使いこなしてパッシブに暮らす-詳細写真02

中古で購入した低層マンションは全8住戸。M邸は最上階2戸のうちのひとつで、上からも横からも日射や外気の影響を大きく受ける

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建物のほぼ中央を貫通する吹き抜けに面した出窓を背にしたMさんに、ダイニングテーブルでお話をうかがう。今回の窓リフォームを手がけた旭建硝の中西繁樹さんにもご同席いただいた

内窓設置とガラス交換。ふたつの技術で全開口部をエコガラスに

内窓を迎える準備ができ、エコリフォーム工事は練馬区のガラスプロショップ・旭建硝に託されました。

現地調査に訪れた代表の中西繁樹さんは、西面に窓が多いうえに周辺住宅から日射が遮られることもないM邸を見て「冬は暖かいけれど、夏の暑さ対策はなかなか難しい」との印象を持ったそうです。
また、北向きのコーナーガラスがある奥様の寝室は「すごく寒いだろうなあと思いました」

提案したのは、アルゴンガス入りの断熱エコガラスを入れた内窓です。

西日を受ける3つの窓には、当初遮熱タイプのエコガラスが検討されましたが「外窓が網入りガラスなので、内窓の断熱性能を上げすぎて温度差が生じると熱割れする心配があります。トレードオフとして、熱貫流率を少し抑えた断熱タイプのガス入りエコガラスを選択しました」と中西さん。

さらに、内窓を採用しづらい出窓やコーナーガラスでは、既存サッシをそのまま生かして真空ガラスに入れ替えることとしました。

通常はあまりお目にかからない、興味深い施工も見られます。

窓リフォームでしばしば問題になるのが、実は網戸との兼ね合いです。もっとも一般的なのは、エコガラスはシングルガラスより厚みがあるため、取り替えると網戸に当たって動かせなくなるような状態。施工者はそのつど、頭をひねってさまざまな解決策を発見しています。

M邸では、奥様の寝室の窓がそうでした。
外開き窓の室内側に内開き式の網戸がついていて、内窓をつける余地がない状態でしたが、中西さんは網戸をプリーツ式のものに換えるアイディアで内窓の設置を可能に。しゃれたイメージの窓に仕上げたのです。

欧米諸国と違い、網戸は日本の住まいのほぼ必需品といえるもの。エコリフォーム時には、難しいと思ってもあきらめずに検討したいものです。

こうして2018年1月、2日間の工事ですべての窓がエコガラスでリフォームされました。
「息が白くなるほど寒かった北の部屋に、普通にいられるようになりました。結露が発生したことはありません。夏はエアコンがすぐに効きますよ」

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玄関ホールから見た室内。中央にLDK、その両脇にMさんが寝室にしている和室と書斎があり、それぞれの窓はほぼ真西を向いている。長いマンション暮らしの習慣で「基本的に、昼も夜も窓にはカーテンを引かないんですよ」とMさん。その言葉どおり日射遮蔽には主に室内シェードを使い、リビングの掃き出し窓と腰高窓には何もつけていない

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西向きの外窓はすべて網入りガラスとなっている。熱貫流率の最も低い遮熱タイプのエコガラスを内窓に使った場合、日射があれば真夏は外窓ー内窓間スペースの温度が70度にもなることがあり、真冬には外窓の結露発生がより激しくなるという。どちらも網入り外窓が熱割れする要因で、中西さんはここにガラス選択のポイントを定めた

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引き違いとコーナーガラスが組み合わされた玄関の出窓は、既存サッシを生かして真空ガラスに入れ替える方法を採用

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外開きの既存窓と内開きの内窓、その間にプリーツ式網戸をはめこんだ寝室の窓。施工者の腕が光る美しい仕上げだ

内窓は「出っぱる・面倒」転じて「奥行き・安心・きれいな陰影」

断熱性能は二重丸。しかし存在そのものが気になりやすいのが内窓の特徴でしょう。

なんといっても、今までなかった“もうひとつの窓”が部屋に出現するのです。効果は高いかもしれないけれど、結局部屋が狭くなる? いちいち2回も開け閉めするのは面倒… いろんな心配が頭をもたげてきます。

しかしMさんは涼しい顔で「内窓があると奥行き感が出てカッコいいし、陰影もきれい。しゃれていると感じます。ガシっとしていて、そこにアルミのスペーサーが見えると、守られている感もある」

室内に内窓が出っぱってしまうのは、どうですか?

「出っぱったら松ぼっくりとか置けばいいんじゃないですか(笑)僕は気になりません」

中西さんは「新しい視点ですね。デメリットをメリットに、マイナスをプラスにしている。とても参考になりました」と感心しきり。
確かに、内窓によるエコリフォームで“仕方がない”“やむを得ない”とされてきた弱点が、見事に長所へと昇華しています。

でもね、とMさん。
「なんでもいいわけではないんですよ。例えばリビング掃き出しの内窓には、クレセントがついていないサッシを選んでいます。障子みたいな感覚で邪魔にならない。すっきりしていて、質感もあるすぐれたデザインです。こういうことが必要なのではないかな」

高い性能と美しいデザイン。相反するとも思われがちな両者をいかにバランスさせるかが豊かな住空間にはやはり不可欠なのだと、改めて目を開かれるようでした。

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奥様の寝室の北側はルーフバルコニーに出る扉・コーナーガラス・引き違い窓とガラス張りの開口で固められ、十分な採光はあるが厳しい寒さの元凶にもなっていた。引き違いの内窓とガラスの内扉をつけ、コーナーは真空ガラスに入れ替え。リフォーム時に木工事された枠に違和感なくおさめられている

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内窓の出っぱりに載せられた松ぼっくりは、インテリアそのもの

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クレセントのない掃き出しの内窓は、施錠なしで気密性能を保つ工夫が施されたもの。純白のすっきりしたデザインがシンプルモダンなM邸の内装に合っている

体に合わせて開け閉めする。これぞエコガラス内窓の極意

さらにM邸の窓リフォームで注目したいのが“使い方の妙”です。

「暖冷房機器は、人のいるところで使います。リビングにいればそこだけ閉め切るので、玄関その他は熱でモワッとしていますね。同じように就寝時は寝室を閉め切ってエアコンを入れ、リビングは窓を開けて外気を入れるんですよ」

一見「せっかく窓の断熱・気密性能を上げたのに、どうして熱い外気を入れてしまうの?」とも思えます。けれど
「閉め切ってエアコンをかけっぱなしは不健康な気がして。開けて暮らせるのなら極力開けていたいですね」というMさんの言葉に、断熱リフォームで忘れられがちな“人間本来の自然な身体のあり方”に気づかされる思いでした。

「冬の昼間は内窓を開けて出かけます」とも。
豊かな日差しが差しこむと真冬でも室内がぽかぽかになるのは、多くの人が経験しているでしょう。しかしエコガラスはその断熱性能ゆえに、この“ほしい日差し”をも遮りやすい面があります。その簡単な解決法が“日射がある間は内窓を開けておく”ことなのです。

そんなの当たり前じゃないか、とも思えます。しかし「内窓でエコリフォームしたお客様の多くが、実はつけたらそれっきりになっているんです」と中西さん。「それは僕らが上手にお伝えできていないということだと思います」と続けました。

「体に聞き、それに従って住まいの環境を整えるのが、昔から培われてきた日本人の暮らし方。内窓も同じで、本当は必要な開け閉めをして使うものなんです」

エコガラスをつけたら、次はいかに使いこなすか。エコリフォームの本当の成功は、実はそこにあるのかもしれません。

「集合住宅に住んでいて、中住戸でなかったらエコリフォームをお勧めしたいです。なぜかって? 結露しないから外が見えるんですよ。外がクリアに見えたら幸せだから」
夏涼しく冬暖かくなるのは当然ながら、それと同じくらい大切なことが、この言葉には隠されているのではないでしょうか。
晴れた日には富士山を望めるという窓辺で、豊かに住まうこと、その本質を垣間見た気がしました。

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リビングスペースの奥、西窓のある書斎。今年になってから、西日対策にとレースカーテンを吊ったという。ダイニングのカーテンボックスに入っていたレールを内窓用窓枠につけかえた

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内窓の頻繁な開け閉めは、住まい手自身が窓の断熱性能を自在に操り、室内環境を司ることにつながる

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4台あるエアコンは夏は28℃に設定。人がいるスペースだけで使い、玄関ホールや寝室などは基本的に外の環境をそのまま受け入れている。「快適というよりも、暮らせる・居られればいいという感覚なんです」そんなM邸のスタイルを「これぞパッシブですね」と中西さん

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窓越しに外がクリアに見える幸せ、という言葉が心に残った

取材協力有限会社旭建硝
URLhttp://www.iimado.site/
取材日2019年8月6日
取材・文二階さちえ
撮影中谷正人
エコガラス