エコ大国・デンマークに暮らす福田成美さんから届いた手紙を毎月お届けします。
ゆたかな自然に抱かれたデンマークライフに、エコのヒントを見つけてみませんか?
これが"私達の樹"。畑の中心に立って、枝を空高く伸ばす樹木です。
毎月撮影して、デンマークの季節の移り変わりをお知らせします。
春の訪れ。北欧のデンマークに春がきました。
森には白いアネモネの花の絨毯が広がっています。まだ樹木の葉は堅く閉じた芽の中で眠ったまま、地面に届く温かい太陽の光が、アネモネの白い花びらに輝いています。
落葉の下には、春を待っていた生命の鼓動が感じられます。暗く冷たい冬が去って明るさが戻ってきたことを喜んでいるような、小鳥たちのさえずりの合間には、遠くに近くにキツツキが幹を叩く音が響いています。
もうすぐ復活祭(デンマーク語で『ポースケ』)。
家々の庭には今年も地面から顔を出したクロッカスやヒアシンスといっしょに『ポースケ・リリィ』(水仙)が、まだ冷んやり感じる風に揺られています。
十字架に架けられたイエス・キリストが死から蘇ったことを祝う復活祭の頃、デンマークの自然にも生きるものの活動する姿が戻ってきます。
草木は芽を吹き始め、鳥たちは巣作りに大忙し。森のシカや野うさぎ、キツネにハリネズミたちは、小さな産まれたばかりの子供達の子育て。
デンマークでは卵の殻に模様を描いて吊るすのが復活祭の伝統的な飾り付けです。
黄色いヒヨコやウサギの飾りも窓越しやテーブルに。復活祭の休暇を待ちながら、春の訪れにふさわしい詩を書いた手紙を家族や親戚、親しい友人へ送るのも、デンマークの伝統です。
ヒヨコやウサギ、水仙などの模様を切り抜いた黄色や緑色の紙には、「誰、誰、誰?○○○する私は誰?」と差出人を連想させる楽しく可笑しい詩が書いてあります。
そして、暗くて寒い冬にはしかめっつらをしていたデンマーク人の表情に、笑顔が戻ってきます。
ポカポカと温かい太陽に誘われて、冬眠から目覚めたカエルが地上に出てきたのに気付くころ、デンマークの風景には多くのサイクリスト達が現れます。
森の小道にも、海辺の自転車道にも、夫婦で、家族で、友だちと、春の空気の香りを感じながら、ゆっくりと行くサイクリスト達や、サイクリングウェアを着用したスポーツサイクルで滑るように走り去るサイクリスト達。
そろそろ自転車通勤も再開です。
朝の新鮮な空気を切って走ると、身体も心も爽やかに洗われて、毎日新しい気分で仕事を始められます。
マイカーに代わる自転車の利用は、健康保持と体力増進だけでなく、エネルギー資源の節約やCO2など温暖化促進物質排出量削減など、環境改善や資源の有効利用への貢献になると意識する人々が近年は多くなりました。
都市部では渋滞でノロノロ運転のマイカーよりも、自転車の利用は移動時間が短くて便利です。
朝夕の通勤通学時に自転車道を走る自転車には、新型のスポ−ツ車もあれば、花模様が描れている中古の昔風女性向け自転車、自分風に設えたシティバイク、等々、乗る人それぞれの個性が表されています。
晴れた日には、自転車で職場近くの水辺まで、白いカモメ達のシルエットがくっきりと映えている青空の下でランチ。
4月の終わりには、コペンハーゲンっ子の心をくすぐる『チボリ』のシーズン開幕。
歓声の響くアミューズメントパークに、音楽の演奏会やパントマイム、喜劇の催されるホールや劇場が設けられています。
子供から高齢者まで誰でも楽しめる、色とりどりの数え切れない花々と緑が水辺に活き活きと輝く庭園である『チボリ』は、コペンハーゲンの街の憩いの場です。
『チボリ』が多くの笑顔で満たされるころ、森はブナの若葉で黄緑色に染まります。