エコ大国・デンマークに暮らす福田成美さんから届いた手紙を毎月お届けします。
ゆたかな自然に抱かれたデンマークライフに、エコのヒントを見つけてみませんか?
大きな『私達の樹』。若葉が開いて夏の姿に近付いています。
緑の畑には花が咲いて黄色の菜の花畑に。
地球儀で見るデンマークは北極に近く北緯54°から58°に位置しています。太平洋側で同緯度にあたるのは、北海道より北にあるカムチャツカ半島です。
北欧諸国の北の地域では、6月に白夜の晩があります。デンマークでは夏至の頃、夜中過ぎに北の空が紫から群青色になって、やがて暗くなったのを見届ける間もなく、ほのかに明るさが戻ってきます。
青空に太陽が輝く時間の長い夏、人々は仕事を終えてからゴルフやテニス、サッカー、サイクリングなどのスポーツで汗を流したり、庭やバルコニーでの夕食を楽しんだり、森や浜辺での散歩で新鮮な心地よい空気に触れたり。
水平線上に浮いた幾つもの白い三角形の帆が、風を受けてゆっくりと右へ左へと移動する風景は、デンマークの夏の象徴のひとつです。
夕方からヨットを出して、波の上で季節の素材を味わう夕食、あるいは2時間ほどセイリングをして、景色の良いところで岸にヨットを着け、浜や磯でのバーベキュー。食事を終えたら、またゆっくりとセイリングして暗くならないうちに帰港します。沖のヨットを背景に、海岸沿いではカヌーやウインドサーフィンを楽しむ人々も。
北欧の人々は視界の開けた空と水の青と草木の緑の景色を素晴らしいものと考え、その景色を毎日眺められる水辺の家にたいへんな価値を認めています。
水辺の景色の次に、北欧の人々が大切なものと考えているのは緑の空間です。住居の近隣に公園や庭園あるいは森林があって、それらを窓から眺めたり、散歩やピクニック、日光浴に利用できることは、住環境の大切な要素になっています。
そしてまた緑の空間が室内に設えられていることも大切です。テラスや窓辺で鉢植えの草花を育てたり、部屋の隅に観葉植物を置いたり、食卓や仕事机の上に花を飾ったり、キッチンでハーブを育てたり。
こうして緑の空間を住環境において大切なものと考えている北欧の人々は、自然環境を保護するために、また地域の住環境を改善するために、環境に配慮した製品や有機栽培の食品を購入したり、環境に負荷の少ない交通手段や暖房方法を利用したりしています。
近年は美しい風景を存分に楽しめる大きな窓のある住宅が増えています。夏でも夜間は肌寒く感じられるほど気温の下がる北欧では、室内の暖かい空気を屋外へ逃さない工夫が住宅設計において重要になっています。
断熱効果の高い二重ガラスの使用は今では一般的になりましたが、さらに断熱効果の優れた窓ガラスが開発されて、大きな窓でも屋外の気温が低いときには室内の温かさを充分に保ち、夏の昼間の暑いときには室内を涼しく保つことができるようになりました。
新鮮な軽い空気を通り抜ける太陽の光が、森の樹木の葉や海や湖沼の水面に輝いて美しくなる6月の北欧には、一年中で太陽が最も高くなる日を祝う、古代の昔から続いている風習があります。
中世のバイキングの時代には火を焚いて、祝杯をあげて神を讃えたと言われています。この夏至の日の祝祭は、のちにキリスト教の聖ヨハネ生誕(6月24日)の祝いになりました。デンマークでは前夜6月23日の晩を『聖ハンス(ヨハネのデンマーク名)の晩』と称して、浜辺で大きな焚火をします。
この夜は灯された火がデンマークの海岸線を浮かび上がらせ、湖沼を美しく照らし、そして、人々は祖国の美しい風土を讃える夏至の日の歌を歌います。
『聖ハンスの晩』を過ぎると学校の夏休みが始まり、デンマークの本格的な夏の到来です。