デンマークからの手紙

2009年7月 バックナンバー

エコ大国・デンマークに暮らす福田成美さんから届いた手紙を毎月お届けします。
ゆたかな自然に抱かれたデンマークライフに、エコのヒントを見つけてみませんか?

緑の葉でこんもりした「私達の樹」。菜の花は実を結んで、畑は緑色に。デンマークの菜種は代替燃料へと加工されて、ヨーロッパ諸国でディーゼル車を走らせています。

緑の葉でこんもりした「私達の樹」。菜の花は実を結んで、畑は緑色に。
デンマークの菜種は代替燃料へと加工されて、ヨーロッパ諸国でディーゼル車を走らせています。


2009年7月

野原や浜に咲く可憐な野バラ。

野原や浜に咲く可憐な野バラ。

デンマークで生まれたツバメの子達。仲良く並んで親鳥が運ぶ餌を待っています。

デンマークで生まれたツバメの子達。仲良く並んで親鳥が運ぶ餌を待っています。

デンマーク人が美しいと好む、ブナの森。

デンマーク人が美しいと好む、ブナの森。

デンマークの伝統的なレンガづくりの家。太陽の光をいっぱいに浴びて咲くバラ。

デンマークの伝統的なレンガづくりの家。太陽の光をいっぱいに浴びて咲くバラ。

友達や家族を緑の庭へ招いてパーティ。北欧の夏の楽しみのひとつです。

友達や家族を緑の庭へ招いてパーティ。北欧の夏の楽しみのひとつです。

たくさんのヨットが停泊する夏の港。

たくさんのヨットが停泊する夏の港。

青空を高く飛び交うツバメ達。
5月の若葉のときに暖かい風に乗ってアフリカから来たツバメ達は、デンマークの心地よい夏の間に、巣作りをし、子育てをします。
湖や沼では白鳥やカモのヒナの、親鳥の後をついて歩いたり泳いだりするしぐさが、しっかりとしてきました。 ヒヨドリやスズメなど小鳥のヒナ達は、産毛から立派な羽に衣替えして、森の樹木の葉の間を飛び移りながら小さな虫を捕まえる遊びに夢中です。

夏の森は重なりあう樹木の葉が創る緑の涼しいトンネル。
森を縦横に辿る小道では、暑さを避けて散歩に来た多くの人々に出逢います。犬を連れて毎日同じ道を行く人、ふらりと気の向くままに歩いたり自転車で緑の空気を楽しむ人々。
最近はスポーツや体力維持と増進を目的にした森の利用が普及してきました。ジョギングやオリエンテーリング、あるいはマウンテンバイクで森を走り抜ける若者。そして、ストックを手に、バランスを取りながら颯爽と歩くノルディックウォーキングをする高齢者の姿が増えています。
森で出逢う人々は誰もが笑顔で挨拶。心地よい夏と好天気と緑の空間を共感する輪が、森に広がっていくような気がします。

デンマークの7月は夏休み。人々は長い休みを利用して旅行へ出かけます。
住宅地では外で遊ぶ子供達の声もなく、さまざまな鳥たちのさえずりが静かな空気をぬって、はっきりと聞こえます。
郊外の商店街を行く人々の数も少なく、日常の喧噪感は消えて穏やかな雰囲気です。コペンハーゲンの街を歩くと、賑やかなストロイエ(歩行者天国のショッピング通り)で耳にする言葉はスウェーデン語や英語、ドイツ語、イタリア語、日本語。地元のデンマーク語は、ときどきちらほらと聞こえるだけ。

ところで海辺でところ狭しと甲羅干しするのは地元のデンマーク人達。
太陽の光を体中に浴びて暑くなったら、浅瀬の海で冷やして。浜の砂が素足には熱いくらいでも、水は冷たい北欧の海。透き通った海水のなか、日向にできた海草の林を小さな魚が行ったり来たり、砂の底には蟹の横歩きを見ることも。

眩しいほど太陽が輝く屋外から帰ってくると、れんが造りの家の室内では火照った肌を心地よく冷やしてくれる静かな空気を感じます。
厚いレンガの外壁は太陽熱を吸収して、室内を涼しく保つ断熱材になっています。夏の太陽は高くあって、日当たりは窓辺だけ。二重ガラスの窓からは光は入っても熱は効果的に遮断されて、しっとりした陰影のある心地よい空気が室内を漂います。

夕食は庭やテラスで。青空と緑を楽しみながら団欒するうちに夕焼けになり、景色が藍に染まる頃には空気が冷えてきて、室内の居間へ移動。冷えた屋外から戻ると室内は温かく、暑い夏の一日の香りが残っています。
昼間、レンガに吸収された熱が今は室内を温めています。二重ガラスの窓は室内の熱を屋外へ逃がさないように保っています。

沿岸に出ていたヨットはマストに灯を点けて、港へ戻ってきました。港には既にたくさんのヨットやクルーザーが停泊しています。
ヨットの船尾に付けられた各々の出帆国を示す小旗には、デンマークの他に北欧のスウェーデンやノルウェーのもの、そしてヨーロッパからオランダ、ドイツ、ベルギーのものも。

港の船上でも、街のホテルでも、郊外の住宅でも、空に宵闇が迫る頃、明日も良い天気でありますようにと願って、おやすみなさい。


福田成美(ふくだなるみ) 福田成美(ふくだなるみ) 東京造形大学デザイン科II類機器デザイン卒。デザイン事務所勤務を経て1990年独立。1993年よりデンマーク在住。持続可能な発展のためのデザインを中心に事業を展開、現在に至る。
『デンマークの環境に優しい街づくり』(1999年)、『デンマークの緑と文化と人々を訪ねて』(2002年)を株式会社新評論より出版。

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