さわやかな青空の日には、浜辺で水遊びや日光浴を楽しめても暑い夏の日のような、きらきらと輝く太陽の陽射しは、いつのまにかどこかへ消えてしまって、森の木立が西風に揺れている姿に秋を感じます。

静かに音もなく降る霧雨の日と、高い空の晴れの日を繰り返しながら、季節は夏から秋へと移り変わっていきます。

まぶしいほどの夏空に自在に弧を描いて飛行していたツバメ達は、今は仲良く揃って軒下や電線に集合し、冬を過ごす北アフリカへの旅立ちを待っています。

暑くもなく寒くもない9月の空気を感じながら自転車で郊外へ出かけると、麦畑では既に刈り込みが終わっています。麦わらを集めた大きな丸や四角の束が、あちらこちらに点在する畑の広がる風景は、デンマークの秋の風物詩のひとつです。

その昔は王室の狩り場であったコペンハーゲン郊外の鹿公園では、どこか遠くから低くうなるような牡鹿の雄叫びが聞こえてきます。茂った草木の陰で立派に育った鹿の角がときどき動くので、鹿の群れがいるのだなとわかります。鹿の群れは、週末にはたくさんの人々が散歩する樹木の間を抜ける小道を横切っては移動していきます。角を絡み合わせて押したり引いたり、牡鹿同士の対決が始まると、のんびりした森の空気が緊張してきます。

昼間は温かくても、夜間にはそろそろ暖房が欲しくなってきました。窓もきっちりと閉めて、すきま風が入らないように。暖房を入れたら窓を閉めることは、デンマーク人なら誰もが知っていること、到来者がデンマークで最初の日にまず習うことです。

デンマークでは、断熱効果の高い窓ガラスを容易に選べるように2010年から窓ガラスに断熱効果が表示されることになりました。2010年にCレベル、2015年にBレベル、2020年にAレベルと、ステップを踏んで断熱効果のより高い窓ガラスの表示が紹介されます。

Cレベルは、現在普及している窓ガラスの断熱効果に相当します。Aレベルは、エネルギーの損失が無い窓ガラスに表示されます。現時点では、そのような窓ガラスはありません。2020年をめざして、Aレベルに相当する窓ガラスの製品開発を行っているのです。

最近は地球温暖化でデンマークの冬も雪や氷が少なくなりました。しかしそれでも東からシベリアの寒気が押し寄せると、強い冷たい海風が平たい土地を吹き抜けて、全てのものを凍てつかせていくようです。ですから、秋の香りが感じられるようになる9月には、そろそろ寒い冬を覚悟して準備を始めておかないと…。

屋根の瓦や屋根裏の断熱材、窓やドアの立て付けなど、煖房で温まった室内に冷たいすきま風が吹き込まないように、温かい空気が屋外へ洩れてしまわないようにと、確認したり、必要とあれば修理をしたり。

秋分の日を過ぎると、急に夕暮れが早まったように思われます。そういえば、日没の後はセーターの温かさが嬉しく感じられるようになりました。

こうして誰もが秋が来たのだなと感じる9月下旬には、今年もたくさんの人々を楽しませたコペンハーゲンのチボリ公園が夏のシーズンの幕を降ろします。

街の建物の間に響いていた子供達の歓声が消えて、デンマークの首都に静かな秋のたたずまいが訪れます。

省エネ住宅を目指す断熱効果の良好な家屋は、冬に暖房効果が向上するだけでなく、夏には暑い外気を遮断して室内を涼しく保つことが可能です。