デンマークからの手紙

2009年10月 バックナンバー

エコ大国・デンマークに暮らす福田成美さんから届いた手紙を毎月お届けします。
ゆたかな自然に抱かれたデンマークライフに、エコのヒントを見つけてみませんか?

夜露で葉がしっとりした'私達の樹'。菜種の刈り取りも終わって、静かな秋を待っているようです。

夜露で葉がしっとりした'私達の樹'。菜種の刈り取りも終わって、静かな秋を待っているようです。


2009年10月

森が黄色や赤に染まり始めています。

森が黄色や赤に染まり始めています。

太陽の光に誘われて、日向には遅咲きのバラの花。

太陽の光に誘われて、日向には遅咲きのバラの花。

強い海風が吹いて、波頭も大きく白く、秋の姿です。

強い海風が吹いて、波頭も大きく白く、秋の姿です。

風が強くても晴れていれば心地よい海辺。犬を連れて散歩の御婦人。

風が強くても晴れていれば心地よい海辺。犬を連れて散歩の御婦人。

晴れ上がった日には屋外でゆっくり。夏に訪問客でにぎわいを見せた港で、今は地元の人々がくつろいでいます。

晴れ上がった日には屋外でゆっくり。夏に訪問客でにぎわいを見せた港で、今は地元の人々がくつろいでいます。

屋外での活動が心地良くても、朝晩は手袋が欲しくなるほど気温が下がるようになりました。森では赤や黄色に色づいた落葉樹の葉が、太陽の光を浴びて鮮やかに青空に映えています。
たわわに実がなるナラやブナ、ヘーゼルナッツの枝から枝へ、冬に備えて保存する食料を集めてリスは大忙し。落ち葉に隠された地面に木の実の詰まった小さな穴を見つけたら、そっとそのままに。きっと、リスか野ネズミあるいはヒヨドリの食料貯蔵庫ですから。
春に小鳥の家族が住んでいた巣箱は、10月に大掃除。きれいになった巣箱は、寒い季節には小鳥たちの宿泊所になります。来年の春にまた小鳥が子育てに戻って来るのを楽しみにして。

秋分の日を過ぎて昼間の時間が短くなり、デンマークの秋がますます深まっていくのを感じるのが10月です。森の動物達と同じように私たちも冬への準備に忙しくなってきます。
庭では落ち葉掃きが始まります。花壇には霜がおりる前に球根を植えて。雨樋も落ち葉を払いながら点検。庭の水道栓には水の凍結を防ぐために断熱材を巻いて。

北欧の冬は、暖房や電気などエネルギーの消費量が気になります。寒く暗い季節には、ついつい必要以上に室内の温度が高くなったり、使っていない空間の明かりがつけられたままになっていて、暖房費や電気代の請求金額を見て驚く家族も少なくありません。
デンマークでは暖房費や電気代あるいはガソリン料金にCO2税が含まれていますから、エネルギー消費を抑えることは家計にとってより経済的になるのです。

EUではCO2など温暖化促進物質排出量を抑えるために、住宅やオフィスビルを含め全ての建物におけるエネルギー消費量を削減する規制を設けています。
例えば、光の色が温かいとデンマークの住宅で好まれて使われてきた白熱灯は、9月からEU圏内で販売禁止になりました。
デンマーク政府の「CO2ニュートラル」の住宅実現を目指したエネルギー政策に促されて、より効果の高い断熱サッシや断熱材あるいは太陽エネルギー利用の技術開発が各関連企業で進められています。2025年に新築される住宅やオフィスビルはエネルギーの有効利用によってエネルギーの無駄遣いのない建物であるというのが政府の目標です。

夕暮れが早くやってくるようになったことがはっきりと分るようになる10月第4週目の土曜日には、時間帯が夏時間から冬時間へ変ります。そして、ある日突然、冬の冷たい空気を思わせる日が訪れて、デンマークは秋から冬になります。
日の光を浴びて赤く大きく実ったりんごが、今年も暑い夏があったことの証拠を残しています。

港では、波を分けて走ったセイリングの思い出を胸に、人々がヨットを岸に揚げています。強い海風が吹き付けて、浜に寄せる波頭が際立つようになってきました。荒い波の下では北海からマスが戻ってきています。マスやサケが生れ育った小川をのぼる季節がまたやってきたのです。


福田成美(ふくだなるみ) 福田成美(ふくだなるみ) 東京造形大学デザイン科II類機器デザイン卒。デザイン事務所勤務を経て1990年独立。1993年よりデンマーク在住。持続可能な発展のためのデザインを中心に事業を展開、現在に至る。
『デンマークの環境に優しい街づくり』(1999年)、『デンマークの緑と文化と人々を訪ねて』(2002年)を株式会社新評論より出版。

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