デンマークからの手紙

2009年11月 バックナンバー

エコ大国・デンマークに暮らす福田成美さんから届いた手紙を毎月お届けします。
ゆたかな自然に抱かれたデンマークライフに、エコのヒントを見つけてみませんか?

秋の陽射しに緑のまだ残る'私達の樹'。枝先では紅葉が始まりました。

秋の陽射しに緑のまだ残る'私達の樹'。枝先では紅葉が始まりました。


2009年11月

冷たい木枯らしの後、赤く染まったツタの葉もわずか。

冷たい木枯らしの後、赤く染まったツタの葉もわずか。

やさしく木漏れ日がゆれる、秋の森。

やさしく木漏れ日がゆれる、秋の森。

海上の風を利用してヨット船内の電力へ。

海上の風を利用してヨット船内の電力へ。

子供達の運動と体力増進が注目されています。寒い日でも温かく身をつつんで屋外活動。

子供達の運動と体力増進が注目されています。寒い日でも温かく身をつつんで屋外活動。

もうすぐ真っ白な大人の姿に。羽も大きくなって、飛行訓練が始まりました。

もうすぐ真っ白な大人の姿に。羽も大きくなって、飛行訓練が始まりました。

強い海風も気にせず日光浴。

強い海風も気にせず日光浴。

庭のリンゴでアップルタルトやパイを作るのが楽しみ。肉料理の付け合わせなどデンマークの伝統料理にはリンゴのレシピが豊富です。

庭のリンゴでアップルタルトやパイを作るのが楽しみ。肉料理の付け合わせなどデンマークの伝統料理にはリンゴのレシピが豊富です。

赤や黄色に染まった葉が一枚ずつ樹木から散りさって、木枯らしに舞うようになりました。 地面の草花は、気温が氷点下に落ちた一晩ですっかりしおれ、緑の色を失っています。
冷たい北からの空気が流れ込んで、冬が迫っているなと感じます。
朝と晩に樹木の枝の間に見える煙突からフワフワと煙が流れ出ると、暖炉の薪が燃えるパチパチという音や乾いた木の香りがしてきそうな気がします。

夕刻の宵闇が早くなりました。森の間を抜ける道をジョギングする人々の息が白く、明かりの下で照らし出されています。
家路を急ぐ自転車のライトがくっきり見えるようになると、いよいよ北欧の長い暗い季節の始まりです。

今年の12月には国連の気候変動会議がコペンハーゲンで開催されます。
気候変動会議の開催国に相応しいように、政府は風力発電や太陽エネルギーなどの代替エネルギー利用や省エネルギー技術の設備導入の普及に努めています。
テレビや新聞などでは官報や各関連企業の広告での省エネルギー対策への呼び掛けが目につきます。

京都会議でのデンマークの目標を2012年までに達成するためには、全国民をあげて省エネルギーへの取り組みが必要です。
過去20年間、風力やバイオマス発電、太陽エネルギーの利用等、代替エネルギー技術の開発と導入に取り組んできたデンマークが、さらに温暖化促進物質排出削減を進め目標値を達成するために、政府は古い住宅のエネルギー効率向上に注目しています。

例えば、デンマークには1960-70年代に建設された戸建て住宅が約452,000戸あります。これら全ての住宅が当時の二重サッシから現在の断熱二重サッシへ窓ガラスを取り替えると、1年間に16億キロワットのエネルギー消費量を節約することになり、35万トンの二酸化炭素排出を削減することが可能になるのだそうです。
この数値は現在のデンマークにおける1年間のエネルギー消費量の10%に相当していますから、省エネルギーのために良い窓ガラスを選ぶことが、どれほど重要であるかが理解できます。

デンマークの1980年以前に建設された住宅では、暖房に使用されるエネルギーの約30%が閉じられた窓から放出されているそうですから、断熱効率の良い窓ガラスへ代えることは、二酸化炭素排出削減によって地球環境の改善に貢献するだけでなく、省エネルギーによる暖房費の節約という経済的な効果ももたらします。

水辺のマロニエは冬の姿に変りつつあります。夏の日に大きな緑の葉の下で遊んでいた水鳥のヒナ達は、それぞれに親鳥と同じ容姿を得て、冷たい晩秋の空気のなかで、ふわふわの羽毛をふくらませています。
白鳥の若鳥も立派に大きく育ち、灰茶色の産毛が落ちて両親と同じに真っ白になると、やがて一人で旅立ちます。

人々の姿が少なくなり静けさの増した港には、冬の気配が漂っています。
夜明け前に出港して、カレイやヒラメ、タラなどの魚を揚げて帰港した漁船では、魚を選別したり、網を洗ったり、忙しそうに働いている漁師達の、真っ赤な頬が厳しい海上の仕事の様子を物語っています。
陸では北方から吹き付ける肌を射すような海風に当ってかじかんだ手で、浜から上がったヨットを整備する人々がちらほらと。

暗い時間が長くなったと気になりだす11月中旬には、商店街に小さな粒の電球のクリスマスの飾りが、また今年も夜の街を華やかに彩ります。
美しい光の演出する楽しい雰囲気に、沈みがちであった心が軽く浮き上がるのを感じます。
広場に大きなクリスマスツリーが立つと、子供だけでなく大人達もクリスマスまでの日を数えて待つ、うれしい季節の始まりです。


福田成美(ふくだなるみ) 福田成美(ふくだなるみ) 東京造形大学デザイン科II類機器デザイン卒。デザイン事務所勤務を経て1990年独立。1993年よりデンマーク在住。持続可能な発展のためのデザインを中心に事業を展開、現在に至る。
『デンマークの環境に優しい街づくり』(1999年)、『デンマークの緑と文化と人々を訪ねて』(2002年)を株式会社新評論より出版。

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