デンマークからの手紙

2009年12月 バックナンバー

エコ大国・デンマークに暮らす福田成美さんから届いた手紙を毎月お届けします。
ゆたかな自然に抱かれたデンマークライフに、エコのヒントを見つけてみませんか?

'私達の樹'の葉も落ちて。撮影時、高い枝に留まって周囲を見張っていたトンビが急に飛び立ち、上空で輪を描きながら、甲高い声で鳴きました。

'私達の樹'の葉も落ちて。
撮影時、高い枝に留まって周囲を見張っていたトンビが急に飛び立ち、
上空で輪を描きながら、甲高い声で鳴きました。


2009年12月

ろうそくを立てたクリスマスの飾りを手作りで。

ろうそくを立てたクリスマスの飾りを手作りで。

デンマークで育ったクリスマスツリー。

デンマークで育ったクリスマスツリー。

冬の森。人を待つベンチ。

冬の森。人を待つベンチ。

雨上がりの束の間の晴れ間に、キノコがこぞって頭を出しました。

雨上がりの束の間の晴れ間に、キノコがこぞって頭を出しました。

久しぶりに青空ののぞいた日。様々な屋外活動を楽しむ、たくさんの人々に出逢います。

久しぶりに青空ののぞいた日。様々な屋外活動を楽しむ、たくさんの人々に出逢います。

モミの枝の緑の輪を飾ってクリスマスを楽しみに待ちます。花屋の店頭にはクリスマスに飾る花やモミの枝でいっぱい。

モミの枝の緑の輪を飾ってクリスマスを楽しみに待ちます。花屋の店頭にはクリスマスに飾る花やモミの枝でいっぱい。

キラキラ輝く小さな電球と、赤いリボンや緑のモミの木で装飾された街は、華やいだ雰囲気で、楽しいクリスマスが近付いたと感じさせてくれます。
広場にはクリスマスツリーを販売する露店が今年も出ていて、近くを通り過ぎると、デンマーク郊外で育ったモミの木の新鮮な香りに出会えます。

デンマークは、クリスマスツリーの里。毎年、たくさんのモミの木がクリスマスツリーとして、ヨーロッパだけでなく世界中へ輸出されていきます。天井に届くような大きなツリーを居間に据えて、星や天使、ハートやリンゴの形の小さな飾りを緑の枝に付けていきます。
近年までデンマークでは、たくさんの小さなろうそくがツリーに飾られていました。本物のろうそくが灯されたクリスマスツリーには、静かで温かい特別な美しさがあります。ですが、最近は住まいの暖房効果が向上して、室内が暖かく乾燥しているため、ろうそくを用いるのは火災の危険性が高いということで、ほとんどの家庭で電球を飾るようになりました。

寒くて暗い屋外から窓越しに、たくさんの飾りで美しく輝く温かそうな屋内を眺めると、アンデルセンの『マッチ売りの少女』を思わず憶い出してしまいます。150数年前、アンデルセンの時代の住環境を思うと、今日の私達の暮らしは、とても豊かなものだと気付かされます。

地球温暖化が深刻に問われ始めた20世紀末以降は、豊かなライフスタイルを顧みて、私達の生活の基盤である住環境を地球的な視点から考えるようになりました。
12月にコペンハーゲンで開催される「地球温暖化防止コペンハーゲン会議(気候変動枠組み条約第15回締約国会議COP15/京都議定書第5回締約国会議)」では、地球温暖化問題を解決する世界全体の排出削減を目指す対策を進めるための、2013年以降の次期枠組みを決めることになっています。

デンマークでは特に、厳しい寒さをしのぐための暖房について、効果的でありながら生態系や自然に負荷の少ない設備や方策の技術研究や開発という、持続可能な社会実現への挑戦が続けられています。
デンマークの人々は、省電力の冷蔵庫や電球の使用が地球環境へ貢献するだけでなく、長期的には経済的であることを経験して知っていて、家庭や職場のエネルギー利用の効率化に努めています。
家屋の増築や改築あるいは修理が必要になったときには、省エネ住宅へと改善します。屋根の修理や葺き替えに併せて、屋根裏の断熱材の厚みを増したり、太陽電池や太陽光利用の設備を導入したり、また、給湯・暖房用のボイラーを省エネ型に換えたりするほか、壁に断熱材を付加することから、窓ガラスを断熱効果の高いものに換えたりするなど、様々な改善がなされます。

省エネ住宅を目指す断熱効果の良好な家屋は、冬に暖房効果が向上するだけでなく、夏には暑い外気を遮断して室内を涼しく保つことが可能です。

家族が御馳走の周りに集まり和むクリスマス・イブの日を、12月1日から指折り数えながら子供も大人も楽しみにして待ちます。
北欧ではバイキングの時代の名残りで、クリスマスを「ユル」と呼びます。「ユル」は、その昔、冬至の日を過ぎて、また一年が回って光が戻ってくることを祝う祭事でした。
キリスト教伝来後は、イエス誕生の御祝にかわりましたが、暗い季節が終わって明るい時間が一日ずつ長くなっていく節目でもあるクリスマスの日を、北欧の人々は心待ちにしているのです。


福田成美(ふくだなるみ) 福田成美(ふくだなるみ) 東京造形大学デザイン科II類機器デザイン卒。デザイン事務所勤務を経て1990年独立。1993年よりデンマーク在住。持続可能な発展のためのデザインを中心に事業を展開、現在に至る。
『デンマークの環境に優しい街づくり』(1999年)、『デンマークの緑と文化と人々を訪ねて』(2002年)を株式会社新評論より出版。

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