エコ大国・デンマークに暮らす福田成美さんから届いた手紙を毎月お届けします。
ゆたかな自然に抱かれたデンマークライフに、エコのヒントを見つけてみませんか?
冬の重い雲の切れ間からそそがれる温かい太陽の光を浴びる'私達の樹'。
雲の切れ間から顔をのぞかせた太陽に誘われて、小鳥達がさえずっています。雪と氷だけの冷たくて誰もいない静かな森に、ヒヨドリの甲高い鳴声が響きわたります。
樹木の間を走り抜けるものを視線で追うと、遠くの薮の陰から鹿がこちらを見ていました。
背の高いナラやブナの枝の間から、やわらかくそそがれている日光が白い雪に反射して、森全体がぼんやり明るく見えています。
白い地面の上に、鹿のひづめの跡、カラスやカササギにブラックバードの歩いた跡、野うさぎが走り抜けた跡、そして早朝にキツネが通った跡を見つけました。
今は自分の呼吸の音しか聞こえないけれど、多くの動物たちが遠くで近くで、私が雪の上を歩くキュッキュッという音に耳を立てているのかと思うと、心が温まって指先の冷たさがやわらぐようです。
日の出が早くなり、日没が遅くなって、屋外の活動が楽しくなってきました。デンマークの2月は気温が氷点下でも、まぶしい太陽の陽射しが戻ってきて、寒い冬のあとの温かい春の訪れを想うようになります。
今年のヨーロッパの冬の寒さは厳しく、デンマークも雪と氷にすっかり覆われました。
一日の最高気温が氷点下という日が数週間続いて、池や堀の水面に張った氷も厚くなり、人々は4年ぶりに天然氷のスケートを楽しんでいます。森や広場の丘では、そり遊びを楽しむ子供や大人達の笑顔が真っ白な世界に輝いています。
雪が積もった地域では、地元のスキークラブがクロスカントリースキーの大会を開いて、たくさんの参加者が冬の屋外スポーツを楽しみました。
屋外活動から帰ってくると、室内の温かさに喜びを感じます。
北欧ではガスや軽油あるいは木材チップを熱源にするボイラーを利用したラジエターによる暖房が普及しています。
市街地の集合住宅では熱と電力の双方を発生するCHPプラントからの地域暖房供給を受けています。CHPプラントの熱源のほとんどは廃棄物焼却やバイオガス利用によるものです。
昨年末からの厳しい冷え込みのため、今年の冬の一世帯当たりの暖房料金は平年より500デンマーククローネ(約1万円)ほど高めになりそうだと関連業界では予測しています。
冬の寒さをしのぐために暖房は必要ですが、そのために支払う料金は、できる限り抑えたいもの。近年は住宅のエネルギーの有効利用が注目されています。
ですから、エネルギー効率に配慮して設計された新築住宅では、日中は太陽の温かい光を室内にいっぱい取り入れられるように、南側に大きな窓が設けられています。
築100年を越える旧い建物でも、屋根裏や外壁に断熱材を付加したり、断熱サッシの窓ガラスに代えることで、室内の暖房効率や住宅のエネルギー有効利用の向上が可能です。
冬の灰色の厚い雲が切れた晴れの日には、南の窓からまぶしいほどの太陽の光が部屋の隅々までとどいて、空気がほかほか暖められているのを感じます。
窓ガラスの汚れが気になって、思わず窓拭きをしたり。太陽が西の空に回って世界が夕闇に覆われるまで、室内には昼間のほかほかの空気が漂っています。
久しぶりの青空に心も晴れて、森を抜けて海辺まで。
港も砂浜も雪と氷に包まれて、その白さはまぶしいほど。見慣れない風景がありました。凍てつくような東からの風が吹き付けて、北欧の冬の厳しさをあらためて思います。
海岸の美しい景色に見入っているうちに、体中が冷えてきました。たくさんの動物達が暮らしている森の空間の、やわらかい温かさを思いだして、家路につきます。