エコ大国・デンマークに暮らす福田成美さんから届いた手紙を毎月お届けします。
ゆたかな自然に抱かれたデンマークライフに、エコのヒントを見つけてみませんか?
雪化粧で春を待つ‘私達の樹’。ふかふかの白い畑の上には、近くの森に住む鹿が通った足跡が縦横に。
空気が冷たくて、雪や氷もまだまだ残っているけれど、晴れの日はまぶしいほど太陽の光が温かい。庭や路地の雪の下から黄色いエランチスの花が顔をのぞかせるようになったら、春はもうすぐ。そう思っていたら、急に空模様が変って雪が降ったり、氷点下の日が続いたり。『三寒四温』という語を思うのが3月です。
ポカポカ心地よい日向では、春を待っていた草花の緑色の芽の先端が、地面から突き出ています。
冬の眠りからさめたスズランやクロッカス、ヒヤシンス、チューリップ、水仙たちが、一日ごとに大きく育っていく様子を見ていると、生命の不思議な力に感動します。
厳しい冬を生き延びた小鳥が巣作りの場所を探し始めました。お互いを呼び合いながら、子育てに適する静かで温かく餌が豊富な場所を求めて、庭から庭へ、樹木から樹木へ飛び渡ります。
今年のデンマークの冬は23年ぶりの大雪、16年ぶりの寒さで、近年の暖冬に馴れた人々にとって厳しい冬になりました。
雪や氷のために幹線道路が渋滞したり、公共交通機関のダイヤが乱れたりする日が続くと、現代の多忙なデンマーク人の顔が、昔ながらのおっとりした北欧の人の顔に変わってきます。真っ白な街の風景に時間がゆっくり流れていくのを感じました。
デンマークの断熱窓のメーカーが全国1300人を対象に行った意識調査では、室内で寒さを感じた場合、男性は暖房を強めるのに対して、女性はセーターなど暖かい衣服の重ね着で済ませるという傾向があると分かったのだそうです。
また、女性のほうがより住宅の省エネルギーに、より気を使っているとも報告されました。
増築や改築時の住宅のエネルギー効率改善に対する意識については、男女に差はなく、質問に答えた人々のうち40%が、過去1年間に住宅の省エネルギーのために修理や改築を行ったと答えています。そのうえ、すでに住宅の省エネルギーのために修理や改築を計画している人々も多くいて、そのほとんどが1年以内に計画を実行すると答えたとのこと。
世帯の暖房や電気、ガスなどエネルギー消費量への意識に関しては、男性の約半数が消費量の数値を記憶しているのに対し、女性の場合は約3分の1程度でしたが、地球温暖化促進物質排出を抑制し地球を守ることについては、男性よりも女性がより高い意識を持っていると分析されました。
一般的にデンマーク人は地球温暖化促進物質排出抑制に積極的に努力しようと考えていることが、これらの調査結果からも読み取れそうです。
3月後半には、春到来を思わせる日が次第に増えて、冬のあいだ凍っていた地面や水面の下で、動物や魚が動き始めたのを感じられるようになります。森では樹木の新芽が毎日少しずつ膨らんでいます。
アフリカや南欧で越冬した渡り鳥が、デンマークの海岸線に降り立つと、もう春。
雪どけ水が流れていくせせらぎの音や、魚が温かい光を浴びて嬉しそうにはねる音、樹木の上で小鳥達が楽しそうにさえずる声が、温かい空気の中に溢れます。
森でも海でも、静かに眠っていたデンマークの自然が目を覚まして、ゆっくりと起き上がり始めました。