エコ大国・デンマークに暮らす福田成美さんから届いた手紙を毎月お届けします。
ゆたかな自然に抱かれたデンマークライフに、エコのヒントを見つけてみませんか?
今月の『私達の樹』。畑の緑がどんどん育っています。大きな樫の木の若葉の芽もふくらんできました。
先月からデンマークから毎月、素敵な手紙を届けてくださっている福田成美さんの著書「デンマークの環境に優しい街づくり」。世界が注目する環境先進国の環境政策を分かりやすく解説した良書です。
「デンマークの環境に優しい街づくり」 出版社:新評論 定価:2,400円+税
デンマークの5月は若葉の季節。澄んだ青空に、太陽の光を浴びて輝く新緑。
北欧の春は、ゆっくりゆっくりやって来て、イースターの休暇を過ぎてから、やっと白いアネモネの花が森の地面に広がり、春を告げる美しい風景を楽しめるようになります。
けれどもそれも束の間、すぐそこに初夏が駆け足で来ています。充分に膨らんでいた芽がほどけると、新緑の葉は一日ごとに成長し、こんもりした樹木の姿をつくっていきます。
森では重なる若葉が日傘になって陰影の模様を見せるようになると、愛らしいアネモネの花は、いつの間にかどこかへ消えてしまっています。
郊外の住宅地の庭先では、プラムの小さな白い花に続いて、リンゴのピンクがかった白い花とナシの真っ白な花が一斉に開花します。
忙しそうに枝から枝へと走っていくリスに出会う通りを歩いていると、どこからともなく紫色や赤や白のライラックの花の香りが漂ってきます。
花壇ではスズランやチューリップ、パンジーなど、たくさんの種類の花の鮮やかな色と香りの響宴がミツバチや大きなハナバチを魅了しています。
庭の芝生は、すっかり緑になって、冬の間はガレージの奥に仕舞ってあったガーデン・ファニチャーが今年もまた、庭の最も眺めの良い、最も日当たりの良い場所に設えられました。まだ夕食には寒いけれども、週末のブランチや昼食は若葉と花の香りたつ庭で。
澄んだ青い空に、草木の新緑が息吹き、色とりどりの花々が映え、そして、リンゴやナシの白い花々が満開になる5月は、デンマークの最も美しい季節です。
早朝から明るい窓の外の風景を、朝食を摂りながら眺めるのが毎日楽しみです。
同じ窓から見える同じ建物と草木等ですが、一日ごとに緑が色づいて花が咲いたり、小鳥達が飛び交う空の遠くに渡り鳥が過ぎ去ったり、ひょっこり向いの家の裏庭にキツネが現れたり、毎日様々に新しい発見があるものです。
発見は窓の外だけではありません。青空の美しい朝、窓ガラスのホコリに気が付いたり、冬の暗い季節には電灯の光の陰になっていたキッチン周りの汚れや天井の隅のクモに驚いたり。もちろん直ぐに掃除を開始しました。
陽射しが明るく強くなるこの季節には、天気の良い週末に窓のガラス拭きをしているのを良く見かけます。
洗剤を新聞紙で拭き取るとガラスがピカピカになるとデンマーク人に教えられて、試してみたら本当にきれいになって感心したことがあります。ガラス拭きに新聞紙を使うように、少し昔風な掃除の方法だと、たくさんの用具や洗剤も必要無くて、清掃作業が少しばかり気楽になります。
コペンハーゲン・コムーネ(日本の『市』に相当する自治体)の家庭内の『化学薬品追放』の勧めによれば、一般家庭の清掃には、家庭清掃用合成洗剤、食器用洗浄洗剤と酢の3つがあれば充分なのだそうです。
ヨーロッパでは水道水に含まれるカルキ分が多く、キッチンやトイレ、バスルームなど水周りの清掃には、備品に付いたカルキを取り払う溶剤が必要ですが、これは酢(食用酢)を用いることで充分可能です。
清掃用の合成洗剤と食器用洗浄洗剤は、もちろん環境を配慮して、天然の原料によるもので、香料や色素が無添加でアレルギー反応を触発しない製品が好まれています。
初夏のさわやかな風を求める人々で、港には活気が戻って来ています。冬には陸に上げられていたヨットは、手入れとペイントを施されると、次々に港のハーバーの水上へ。
それからマストを上げて、帆を装着して、船内に備品をしつらえたら、夏の風を受けて出帆を待つだけです。