事例紹介/リフォーム

ようこそ、我が家へ 〜屋上庭園で楽しくエコライフ〜

開口部にこだわった新築レポート -「安心」と「快適」プラスαの家 東京都 W邸-


窓は、単なる家のパーツではありません。光の取り込み、風の通り道、断熱・防音、眺望、インテリアetc……と、 生活を快適に保つさまざまな役目をあわせもっています。そう、開口部にこだわるということは、生活にこだわるということ。 そんな生活にこだわるご家族のお住まいを拝見しました。

明るく広がりのある家族のスペースLDK

2階3階の南側のバルコニーは外からの視線をカットする役割も。1階は駐車スペースを2台分確保し、防犯にも留意したつくり。

2階3階の南側のバルコニーは外からの視線をカットする役割も。1階は駐車スペースを2台分確保し、防犯にも留意したつくり。

まるで我が家の庭のような緑がまぶしい東側の窓。

まるで我が家の庭のような緑がまぶしい東側の窓。

シンプルで低い家具を配置することで空間に広がりが…

シンプルで低い家具を配置することで空間に広がりが…

温かみのある木製のブラインドが光をさらにまろやかにする。

温かみのある木製のブラインドが光をさらにまろやかにする。

都心の閑静な住宅地に建つW邸。3階建ての近代的な外観のお宅です。家の中心は2階にあるLDK。

「共働きだから家にいる時間そのものは短いのですが、子どもも小さいので、家にいるときは2階にいることが多いですね」とW様。ご家族は4歳になるお嬢様とご夫婦の3人。

玄関から階段を上がると柔らかな光のあふれる広々としたワンフロア。まさに家族だけの特別な空間です。特徴は窓が多いこと。南面と東面は一面窓。とくに東側は吹き抜けで、窓の高さが2フロア分くらいあり、明るさに圧倒されます。

「2階は外からの視線も気にならないため大きな窓を使用しました」と建築家の武山先生。東側にある国立中学の豊かな緑を借景としてとりいれることで、奥行きを出しています。また、キッチンの対面部分のシンク上にあえてつり戸棚をおかないことで、見通しをよくし、リビング部分との一体感をだすなど、空間に広がりを持たせる工夫をしています。さらに、リビングの中央は床に近いところで過ごすようにしていて、どこにいても部屋中が見渡せる仕掛けです。加えて、広い窓を通じて外界とのゆるやかなつながりが感じられ、明るくのんびりできるそんな空間ができあがりました。

その結果、ご家族それぞれが思い思いに過ごしながら、ゆったりと同じ空気を共有できるLDKになっています。


究極のお気に入りは3階の浴室

吹き抜け部分からリビングをのぞむ。右にあるのは浴室の窓。

吹き抜け部分からリビングをのぞむ。右にあるのは浴室の窓。

キャットウォークも開放感いっぱいの明るさ。

キャットウォークも開放感いっぱいの明るさ。

W様ご夫妻のいちばんお気に入りの場所は3階の東北にある浴室。じつは最初の設計図では浴室は1階だったとか。

「ご一家は朝お風呂にはいられるとうかがって、一日の始まりの楽しい時間は明るく開放的な場所がいいかなあと思い、浴室は寝室と一緒にして3階にすることを提案しました」とおっしゃるのは一緒に設計にたずさわった辰野先生。

浴室には窓が3カ所あります。ひとつは天窓。朝の光が降り注ぐので、朝は電灯いらず。さらにここをあけることで換気ができるので、湿気が残らないというメリットもあります。

奥様も「娘も私も朝お風呂にはいることでシャキッと目覚めますので、一日の始まりがスムーズですよ」と大絶賛。

そして北側とリビングに面した窓。北側の窓は浴室に見晴らしを、リビングに面した窓はリビングに光を、それぞれもたらします。もちろんリビングとつながることで家族とつながっているという安心感も見逃せません。


丈夫な家にこだわり出会った建築家

壁面の大きな棚は収納力抜群で飾り棚の役割も果たしている。

壁面の大きな棚は収納力抜群で飾り棚の役割も果たしている。

パンチメタルの階段は光と空気も透過させるので、フロア間もゆるやかにつながっている感が…

パンチメタルの階段は光と空気も透過させるので、フロア間もゆるやかにつながっている感が…

寝室と予備のお部屋の間には可動式の収納が…。将来を見据えた間取りとしかけ。

寝室と予備のお部屋の間には可動式の収納が…。将来を見据えた間取りとしかけ。

W様は、OZONEの家造りサポートの建築家コンペコースを通じて、武山先生と辰野先生の建築事務所に出あいました。条件は、「いずれ地震が東京にも来る、そのとき、家族の命を守れる家」。

「最初につくってきてくれた模型を見たとき、窓がたくさんあって明るくって、ああ、こういう家がいいなあって、すっと気持ちがはいっていきました」とW様。

自分たちの必要なものはこれだと思ったそうです。間取りは、1階は客間と納戸とシャワールーム、2階はLDK、3階は寝室という配置はそのときのままです(前述通り浴室のみ移動)。

それから1年間、W様ご夫婦は武山先生、辰野先生と、細かな仕様を固めていきました。

「急ごうと思えばもっと早くできるのですが、建ってからでは直せないのが家。一大事業に際してどうしても施主様も建築家もテンションが上がりがちですから、じっくり冷静に話し合いを重ねることが必要なんです」と武山先生。

W様は「女性と男性の二人の建築家がそれぞれの視点からきっちりかかわってくださったので、素人には気がつかないような随所に心配りされた家ができました」とおっしゃいます。

子育て中の働き盛りのご夫婦にはなにより、無駄のない家事動線を考えた収納や片付けやすい環境が大事。この家は、安全性を考えつつ使い勝手を考慮しています。たとえば物干し場。W邸の物干し場は屋上のペントハウス。天気を気にせず干せて、乾きやすいだけでなく、衣服の収納場所にも近いのがうれいしいところ。

さらに、リビングから洗濯物がいっさい見えないというのも心憎い配慮です。食品用の大型収納もキッチンの近くに大きくスペースを取り、動作がスムーズになるようにしています。また、作り付けの家具をメインに家具を少なくしたのも使い勝手と安全性を両立させたため。とくに、壁に厚みのある鉄骨造りの特徴を生かして、壁面ディスプレー収納を多用したのは奥様のセンスのよさの見せ所です。

 


全部エコガラスにすることで弱点のない家に

外とつながっていて「閉じていない」ゆるやかな開放感。もちろん昼の電灯は不要。

外とつながっていて「閉じていない」ゆるやかな開放感。もちろん昼の電灯は不要。

さて、これだけたくさん窓があるW邸。窓はなんと全てエコガラス。きっかけは去年の6月の地鎮祭でした。

「ここは周囲に木も多いので、西日は大丈夫と思っていたんですが、当日は天気がよくて斜め上からの西日がものすごく辛くて…」と、急遽暑さ対策を相談したW様。武山先生たちが一部の窓をエコガラスにすることを提案したところ、W様は「いっそのこと全部エコガラスにしましょう」と決断。結果は、大正解!

「本来は、壁と窓を比べると、窓が弱点になりがちなんですが、窓の性能を全部あげたことで弱点が見事になくなりましたね」と武山先生。竣工はこの2月でしたが、冬の結露はもちろんなく、家全体の気密性も大幅アップしたそうです。夏も、心配した西日などの暑さに悩まされる事もなかったとのこと。実際、窓と壁の温度を測ってみると、温度差は1、2度くらいしかありません。つまり、冬の冷気も、夏の熱気も、窓から入り込まないだけでなく、窓が限りなく壁の機能に近づいているのです。光を取り込むという窓としての機能を損なうことなく、壁としての遮熱性や強さを備えているのがエコガラスなのでしょう。


屋上庭園で暑さ対策とエコと楽しみと・・・

見晴らしのいい屋上。この夏は大きなビニールプールを設置し水遊び場に変身!

見晴らしのいい屋上。この夏は大きなビニールプールを設置し水遊び場に変身!

元気いっぱいの娘さんと3人で。

元気いっぱいの娘さんと3人で。

暑さ対策と言えば、屋上に芝生を植え、庭にしているのもW邸の特徴です。

「以前住んでいた社宅は最上階で、昼間にコンクリートに蓄えられた熱が夜放出されて、本当に暑かったんです。でも今年の夏はそんなことはありませんでした」とW様。エアコンをかけていても効きがよく、空気が安定している感じがするとおっしゃいます。ちょうど寝室の上にあたる屋上に土やすのこがあるため、太陽熱が蓄熱されず、夜が楽になったそうです。

ちなみにこの夏の電気料金は最高でも1万5,000円には届かなかったとのこと。暑さをがまんすることなく、都心にある100平米強の家の光熱費としては高くはありません。ましてや窓をふんだんに使った家としては安いとも言えます。

「屋上緑化の効果もあって、変な蓄熱などなくて快適です」とW様。

芝生のお手入れはもっぱらW様。植物の手入れは初めての経験とのことで「かわいい!」と愛着をもって芝刈りや水まきなどに取り組まれているご様子。見晴らしのいい屋上は気分も上々だとか。屋上には小さなキッチンガーデンもあり、奥様が育てた大葉は食卓に彩りを添えています。もちろん屋上はお嬢様の遊び場でもあり、この夏はプールで水遊びを満喫されたそうです。

家族それぞれが楽しく暮らすためのしかけがあることは、家そのものの底ヂカラなのかもしれません。


今月の家を手がけた建築家:武山 肇 / 辰野 智子 取材企画協力:OZONE家づくりサポート <建築家選びから住宅の完成までをコーディネートする機関です>

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