事例紹介/リフォーム

シンプルに、マンションで、大規模でも。
暑さ対策・3種の窓リフォーム

兵庫県・F邸/千葉県・T邸、M邸

取材協力:
(株)木村ガラス
http://www.kimura-glass.co.jp/

丸勝建材工業(株)

梅雨も明け、いよいよ夏も本番です。毎年のことながら我が家の暑さ対策に頭を悩ませる方は少なくないのではないでしょうか。

住まいのかたちは人それぞれ。暑さの撃退にも、家の個性や状況に合った多様な方法があります。
ここでは、窓から入ろうとする外の熱気をシャットアウトして室内を涼しく保つ3つのエコリフォームをご紹介しましょう。

ブラインドの活用から内窓の設置、さらには本格的な断熱改修まで、エコガラス窓の断熱・遮熱力がいかんなく発揮されています。

窓リフォームはエコガラスと外付けブラインドをセットで

神戸市の高台に建つF邸は、敷地形状と風の通り道を考慮した設計がなされた結果、西を向く窓がたくさんある家です。

当然ながら西日が気になりますが、エコガラスとブラインドによる窓リフォームに加え、夏季に西から吹いてくる涼しい風も上手に利用することで、真夏でも一日中快適な室内環境を実現しました。

2階には主寝室と子ども室があり、それぞれ西を向く掃き出し窓があります。リフォーム以前の夏は「ブラインドと遮光カーテンとできっちり閉め切ってもクローゼットの中の衣類まで熱くなる」状態。
就寝前は1時間以上もエアコンをフル稼働して部屋を冷やし、それでもタイマーが切れる朝方には暑さで目が覚める、厳しい夏の日々でした。

竣工から22年目に行った大規模改修で、窓のエコリフォームにも取り組みました。ここで登場したのがエコガラスです。

2階の西向き窓を、既存の窓枠を残してガラスだけ取り替える『ガラス交換エコリフォーム』することで遮熱力をぐんと上げました。
同時にブラインドも、従来の室内設置から外付けの電動ブラインドへと交換。

状況は劇的に変わったといいます。日中は以前と同様に閉め切るものの、職場から帰宅した後は窓を開けて風を通すだけで室内の熱が取れるように。エアコンの効きも向上し、使う頻度そのものも減りました。
主寝室の快適さはもちろん、以前は暑さで部屋を転々としながら受験勉強していたお嬢さんが、リフォーム後は終日自室の机に向かえるようになり、大学合格といううれしい結果にもつながったのです。

Fさんいわく「窓リフォームはエコガラスと外付けブラインドのセット」がおすすめとのこと。

ブラインドといえば一般的には室内に下げる印象がありますが、実は夏の強い日射や西日防止では、窓の外側につける遮蔽物に軍配が上がります。
窓の外というと日本ではヨシズやスダレといった伝統的な外部遮蔽が思い出されますが、現代の住宅にはデザイン的に合わなかったり、1シーズンでダメになりやすいなど、最近はあまり見かけなくなりました。

F邸が採用した外付けブラインドは、ゆるくカーブする幅の広い羽根を電動で動かし、角度を変えることで効果的な遮光や通風ができるようになっているもの。窓より外側にあるブラインドには、いくつも利点があります。

室内への日射調整はもちろん、ガラスに当たる直射日光も遮れるので窓自体の温度も上がらずにすむのです。ここまではスダレやヨシズと同じですが、羽根の角度が変えられるのが前者ふたつと違うところ。F邸では夏場の卓越風である涼しい西風を、ブラインドごしに室内に取り入れているのです。

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分譲中の隣地に面したF邸西面。ブロック塀に囲まれた1階にはリビングがあり、掃き出し窓部分をオーニングで日射遮蔽している

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外付けブラインドが日差しを遮り、涼しい卓越風は取り込む主寝室の掃き出し窓

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羽根の幅は10cmほど。完全に閉めると窓との間に空気層ができ、断熱の一助にもなるすぐれものだ

エコガラスの内窓でマンションリフォーム

集合住宅では、壁や扉といった共用部のリフォーム時にはなんらかの制限がかかるのが通常です。
窓も共用部に該当するので、ひと昔前までは換えることができませんでした。しかし今では内窓設置のほか、管理規約の変更によってガラス交換が可能になるマンションも増えています。

Tさんご一家が住むのは800世帯を超える大規模マンションの一角。千葉県に広がる敷地は緑が多く、居住者なら誰でも使える集会室やゲストハウスもあり、たくさんの子ども達の声が響く良好な環境です。

2LDK+和室のT邸では、住戸についているすべての窓にエコガラスの内窓を設置しました。冬場、シングルガラス窓の激しい結露に悩んだのをきっかけに、寒さも解決すべく外の冷たい空気が室内に入らないようにしたかったといいます。
隣町にあるガラスプロショップのアドバイスを受けてのエコリフォームでした。

事前確認は必要なものの、専有部である室内につけるもうひとつの窓が一般的なマンション管理規約に抵触することは、今はほぼありません。ゆえに内窓設置は集合住宅での窓リフォームを代表する手法。工期もほぼ1~2日と短く、検討しやすいエコリフォームといえるでしょう。

冬の結露と寒さ防止の内窓は、しかし夏場も大活躍することになりました。

盛夏、T邸では基本的に窓を終日閉め切り、除湿機を運転しています。そして家族が帰宅する夜だけエアコンを稼働させ、就寝時にはオフしてしまいます。
朝もそのまま家族は通勤通学で外出、次にエアコンが動かされるのは夕食時から。

「一度冷やせば大丈夫なんです。エアコンをつけるタイミングが遅くなりました」と住まい手。エコガラスの内窓が外からの熱気を遮断し、同時に夜に作られた涼しく乾いた室内空気を外に逃さず保っているのがわかります。

一方、内窓を考えるときに性能以外で頭をもたげてくる心配があるでしょう。そう、「部屋が狭くなるのでは」という不安です。
T邸の場合、元の窓から13cmほど内側に内窓が設置されました。13cmも? いったいどんな状況なのでしょうか。

しかしながら訪ねた室内で感じたのは「ほとんど気にならない」という印象でした。
理由はもともとの窓枠が奥行き6cmほどもあったのと、それに合わせる形で立派なカーテンボックスがついていたこと。さらに内窓サッシの枠を外窓に合わせ、二重になっていると意識しづらい仕上げになっています。

既存窓の額縁の奥行きやカーテンボックスの有無など、窓まわりの状態は多種多様。もとの姿をうまく生かすことで「新しい窓がついた」「狭くなった」感じを受けない、スマートな内窓リフォームとなる可能性も高くなります。

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T邸住戸のあるマンションは、緑多く閑静な良環境

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白い窓枠が新たに設置されたリビングの内窓。上部にある既存のカーテンボックスに合わせて枠を設けており、せり出している感じがほとんどない

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北側居室につけた内窓。元からある窓枠に収まったため、室内へのせり出しはゼロ

耐震+エコの大規模改修、真新しいエコガラスも

せっかくリフォームするなら耐震とエコを合わせてしっかりやりたい、そんな考え方もあるでしょう。

首都圏郊外の田園地帯に住むMさんご夫妻は、定年退職後の暮らしを安全・快適にと願い、築55年の住まいを壁や躯体工事まで含めた大規模なリフォーム工事で生まれ変わらせました。

木造軸組2階建家屋は、東西南北すべてに窓があります。メインの生活空間である1階東南には広縁が延び、リビングダイニングと合わせて3つの掃き出し窓が並んでいます。

申し分のない明るさを享受する反面、夏は強烈な日差しの熱があちこちの窓から終日差し込み、室内の温度は上昇するばかり。Mさんご夫妻が出勤している平日昼間は、家じゅうの雨戸を閉めていたそうです。

掃き出し窓には、一時はヨシズも張ってみました。しかし周囲に遮るものがない田園地帯は風が強く「すぐに寄ってしまうし、外壁も傷がつくので結局やめてしまいました」

リフォーム工事の中心となったのは1階です。外皮部分では元の土壁を壊し、地震に備える耐力壁を10箇所以上足しながらすべて新しくしました。入れられた断熱材は厚さ100mmのグラスウール。同様に床や天井も、薄くて古い断熱材を廃棄して新しいものへと交換しています。

開口部はもちろんエコガラスです。
比較的軽めのリフォームとなった2階も含めて、家じゅうが新しいエコガラス窓になりました。サッシも新しくなり、以前のシングルガラス窓から断熱・気密性能ともにぐんと向上しています。

そして工事後に迎えた夏、どんな変化が訪れたのでしょう。

かつて家じゅうで回していたエアコンは、家族がいる部屋だけ運転するようになりました。設定温度は25℃から28℃に上がり、ひと月1万5000円だった電気料金も1万円程度までダウン。
「蒸し風呂のようで行きたくなかった」トイレや広縁などの不快さも改善され、リビングダイニングからの移動も苦にならなくなったといいます。

エコガラス窓と、分厚くて新しい断熱材の入った壁・床・天井。高い断熱性能を備えた建物外皮にくるまれたことで、省エネはもちろん、クーラーから離れるのがつらい、そんな不自由さから解放された快適な暮らしとなったのです。

おもてに熱気が充満しているのなら部屋に入れず、冷えた室内空気は外に流れ出ない家。ひと昔前と比べて最高気温は上昇傾向が続き、高齢者人口も増え続けるこの国の夏において、エコリフォームによる住まい環境の改善は、我慢せず安全に暑さを乗り切る有効な一手ではないでしょうか。

家に入り込もうとする外気の7割以上はガラス窓を通ってきます。エコガラスに与えられたのは、この“最大のウィークポイント”にやってくる熱気をはね返し、部屋を快適に保つ力。夏のリフォームにはうってつけです。

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東南を向くM邸ファサード。1階には玄関を挟んで3つの大きな窓が並んでいる

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広縁の掃き出しは手前1.7m奥側2.6mの幅がある。リフォーム以前は大量の日射熱が入り込み、暑さの元凶になっていた

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朝日が気持ちいいというキッチンの出窓。新たに入れられた分厚い断熱材が存在感を発揮している

二階さちえ
撮影中谷正人/渡辺洋司(わたなべスタジオ)
エコガラス