事例紹介/リフォーム

内窓を開けて西日も活用
窓いっぱいの家を暖めるエコガラス

千葉県・N邸

Profile Data
立地千葉県柏市
住宅形態軽量鉄骨造2階建
リフォーム工期2020年5月・7月(各1日ずつ)
窓リフォームに
使用した主なガラス
真空ガラス・エコガラス(内窓)

外房の別荘生活を終え、元の住まいをエコリフォーム

築30年を超え今も美しい佇まいを見せるN邸は、東西南北にたくさんの窓があります。その多くにエコガラスの断熱リフォームが施されたと聞き、訪ねてゆきました。

住まい手のNさんは、ご夫婦で外房エリアにある別荘を長く暮らしの拠点としてきたそうです。ご主人が他界されたことで2020年に別荘を手放し、この家で快適に暮らそうと決めてエコリフォームにのぞみました。

住まいの快適さと窓ガラスの性能の関係は知っていたといい「御宿の家の窓が複層ガラスで、部屋の中は暖かく防音効果もありました」
それに比べて千葉の家では、シングルガラスの窓が結露し寒さも感じる状態。しかし当初はどうしていいかわからず「ガラスに何か塗るのかしら? と思っていました」と笑いました。

Nさんは自治体の広報誌などで情報を集め、同じ市内でエコリフォームに取り組む(株)木村ガラスにたどり着きます。お隣も過去に工事を依頼したと聞き、半信半疑ながら連絡を取りました。

やってきた社長の木村昇さんは窓の状況を確認し、既存のアルミサッシを残してガラスだけをエコガラスの一種・真空ガラスに交換する窓リフォームを提案。
その一方で、N邸の顔ともいえるダイニングスペースの出窓には、アルゴンガスの封入で断熱性能をさらに高め、防音力も備えた“ハイグレードのエコガラス内窓”をつけては、と勧めたのです。

内窓を開けて西日も活用 窓いっぱいの家を暖めるエコガラス-詳細写真02

リビングダイニングには大きな掃き出し窓が並ぶ。壁には熱交換型換気扇がついていた

内窓を開けて西日も活用 窓いっぱいの家を暖めるエコガラス-詳細写真03

N邸2階にあるご主人の書斎。西向きの窓は遮熱性能を高めた真空ガラスでエコリフォームした

断熱性能を最重視し、出窓に内窓をつける

我が家に出窓がある方は『よりによって、なぜ出窓だけに内窓?」と思われたのではないでしょうか。

出窓の最大の魅力は、いうまでもなく窓台スペースです。そこに内窓をつければ台無し、しかも他の窓はガラスだけ換えるのに…そう考えるのが自然でしょう。
実際、内窓でエコリフォームしても出窓だけはさわらない、というお宅は少なくありません。

Nさんにも同様の不安がありました。
それでも設置を決めたのは“性能本位“の考え方があったからです。

出窓はほぼ真西を向き、外は水路や道路、そして畑が広がります。このため午後は西日がまともに射し込み、夏場のダイニングは「マッチを擦ったら火がつくくらい(Nさん)」の暑さ。
一日のうち多くの時間を過ごす場の開口部として、他の窓以上に高い遮熱・断熱性能を求めたのです。この切実な要望にこたえたのが、木村さんの内窓提案でした。その後、同社でエコリフォームを担当する木村眞由美さんとの打ち合わせを重ね、工事へとのぞみます。

結果はどうだったでしょう。
Nさんいわく「実際につけてみたら、高級感があるんですね。それに外が畑だったので防犯面で少し心配でしたが、窓が二重になり安心感もあります」
不安は消え、予想外のオマケまでついたかたちとなりました。

出窓の工事と同時にリビング・キッチン・和室・寝室・玄関の窓はエコガラスへの交換でリフォームされ、トイレなど一部を除いてN邸のほとんどの窓が断熱力アップしました。

その効果のほどを、うかがってみましょう。

内窓を開けて西日も活用 窓いっぱいの家を暖めるエコガラス-詳細写真04

ダイニングテーブルでお話をうかがった。正面に見えるのがハイグレードのエコガラス内窓をつけた出窓。花々で飾られ存在感がある。窓外に水路と畑、その向こうに住宅が連なる

内窓を開けて西日も活用 窓いっぱいの家を暖めるエコガラス-詳細写真05

玄関の面格子付き上げ下げ窓もエコガラスでエコリフォーム

初夏のエコリフォームで西日を撃退

工期は5月と7月の1日ずつで、暑さが厳しくなる前に完了。その後は「以前は外から帰宅するとすぐに冷房をつけましたが、急がなくてよくなりました」

夏場は南からの日射熱で暑くなり、午後2時から4時半頃まではシャッターを閉めていた和室の掃き出し窓も、今は閉めずにいられるように。障子を通して柔らかく差し込む外光で明るさが保たれるようになったのです。

キッチンではシンク正面の窓が真西を向いています。ダイニング同様に西日であぶられるため、以前はステンレス製のカーテンをつけていました。
遮熱タイプのエコガラスに交換したことでそれも不要になっています。

そして出窓につけられた内窓は、期待された高い遮熱性能をいかんなく発揮し、西日の辛さを改善しました。
興味深いのは、外窓と組み合わせた使い方です。「外窓の両脇を開けて風を通し、内窓だけを閉めるんです」
熱い空気がたまらないよう外窓部分で流しながら、エコガラスの内窓で西日の日射熱は跳ね返す。ダイニングは明るくて暑くないスペースへと生まれ変わったのです。

内窓を開けて西日も活用 窓いっぱいの家を暖めるエコガラス-詳細写真06

障子付きの開口が2箇所ある和室。右手の掃き出し窓が南を向いている。石と緑でしつらえたかわいらしい庭に面しているが、エコリフォーム前の夏はシャッターで閉じられていた

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くもりタイプのエコガラスに交換されたキッチンの窓

内窓を開けて西日も活用 窓いっぱいの家を暖めるエコガラス-詳細写真08

出窓の両脇には網戸がつき、ハンドルを回して開閉できる。夏はここを開けないと窓台の空間がとても熱くなるという

エコガラスで迎える暖かい冬 内窓を開けて西日の熱も活用

訪ねた12月の初旬、冬を迎えてNさんは「お風呂は結露もなくなって暖かくなりました」今回は工事を見送った洗面所の窓もやっぱりやろうかしら、とにっこりしました。
夏同様に、室内の寒さもエコリフォームで改善されたようです。

寝室の窓もすべてエコガラスに交換されました。昨年までは就寝前に1時間ほどオイルヒーターをつけており、今年は「まだよくわかりません。でも、去年よりは寒くないですね」
ここは南北と東面に窓がある三面採光で、そのぶん外気の影響も受けやすい部屋。寒さが本格化することで効果もより見えてくるのでしょう。

オイルヒーターを使用していることも、ここではひとつのポイントとなります。
エアコンやファンヒーターと違い、オイルヒーターは温風を出さずにパネル内のオイルを暖めて放熱し、壁や床など空間全体をじんわりと暖める暖房機器。部屋自体の断熱力がその効果に直接関わる、言い換えれば窓や壁が冷えやすいとなかなか能力を発揮しづらい面があるのです。
“静かで安全”と寝室や小さなお子さんのいる部屋で人気ですが、選ぶ際には部屋そのものの断熱力も合わせて考えるとよいでしょう。

一方ダイニングの出窓では、西日を逆手に取ったパッシブな暖房が実行されていました。
「西日が差してきたら内窓を開けるんです。あったかいですよ!」

もともとNさんは、一年を通じてひんぱんに窓を開ける暮らしをしてきました。冬も夏も起床したらまず窓を開け、家事の合間、外出からの帰宅時などことあるごとに窓開けをして家に風を通します。エコリフォームを終えた今もそれは変わりません。内窓もその一部なのでしょう。

内窓でエコリフォームをした住まい手が、窓をほとんど開けずに一年を過ごすようになったという話を聞くことがあります。
外から入ってこようとする冷気や熱気をしっかり遮断されるため、室内は夏も冬もエアコンやヒーターで空調することで“外部と隔絶された快適さ”を保てるようにもなるのです。断熱性能の高いエコガラスや壁に厚く断熱材を入れた建物であれば、確かに一理ある方法ともいえるでしょう。

しかし、室内外をきっちり分けずに自然の力を上手に利用する手もあるのです。
たとえばNさんのように、冬場に西日や南からの日射を内窓を開けて迎え入れれば、部屋に陽だまりをつくれます。日差しが弱くなったところで内窓を閉めれば、暖まった空気が外に逃げることもありません。エアコンの稼働時間が短縮され省エネにもつながります。

“開け閉めできる”のは、光の透過とともにガラス窓と壁との決定的な違いです。どんなに断熱力が高かろうと、開けたいときや開けて気持ちがいいと思ったらどんどん開けていく。高性能のガラスを自らのライフスタイルに合わせて気持ちよく使いこなしていくことが、エコガラスによる窓リフォームの極意のひとつかもしれません。

内窓を開けて西日も活用 窓いっぱいの家を暖めるエコガラス-詳細写真09

浴室の窓リフォームではサッシも樹脂のものに換えられた

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10畳の寝室は計4箇所の窓があり、明るい反面冷えやすい部屋でもあった

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東を向く寝室の上げ下げ窓。「引き違い窓よりも気密を高くできるので、断熱にはオススメの窓です」と、取材に同席いただいた木村眞由美さん

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今回のエコリフォームでは、多くの窓で真空ガラスが採用された

寒さでちぢこまらない暮らしを支えるエコガラス

窓のエコリフォームを、Nさんは「お金の問題ではないですね。今夜の食事を抜いてでもやったほうがいいと思います」ときっぱり。「年を取ってから、毎日寒い暑いとちぢこまっていたくないでしょう?」と続けました。

出窓をはじめ、当初は「どうなるんだろう」と住まい手に不安も与えていたエコガラスがここまで評価されたことに、担当の木村さんにも笑顔がこぼれます。この取材後、洗面やトイレの窓も追加でエコリフォームが決まったと聞き、Nさんの有言実行を思いました。もちろん、食事は抜かれなかったと思いますが…

ダイニングの出窓には花々が美しく咲き誇っています。どれも庭で丹精したもので「このバラは切ってから2週間経つのに、こんなに生き生きしているのよ」
室内外の中間領域ともいえる窓台スペースの環境がそうさせているのかもしれません。エコガラスも少し役に立っているのかな。そんなことを思いました。

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取材当時はエコリフォームの対象とされていなかった洗面所の窓。この後、エコガラスに交換された

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内窓がついても機能が失われていない出窓

取材協力(株)木村ガラス
URLhttp://www.kimura-glass.co.jp/
取材日2020年12月3日
取材・文二階さちえ
撮影金子怜史
エコガラス