事例紹介/リフォーム

部分工事でも暖かくなったよ
エコガラスの内窓リフォーム

神奈川県・T邸

Profile Data
立地神奈川県秦野市
住宅形態木造2階建
リフォーム工期2020年3月(1日間)
窓リフォームに
使用した主なガラス
エコガラス(内窓)
利用した補助金等次世代住宅ポイント

断熱効果を最優先に、エコガラスの内窓を選択

2020年も押し迫った師走、神奈川県のT邸を訪れました。丹沢山系南東端、江戸庶民の『大山詣り』で賑わった信仰の山・大山の足下に広がる住宅地の一角です。
住まい手は昨年春、地元のプロショップ・諸星硝子店に依頼して窓のエコリフォームを行いました。

希望したのは、エコガラスの内窓を使った窓リフォーム。
ピンポイントともいえる選択の理由を、Tさんは「2年前、和室の窓にエコガラスの内窓を入れたんです」と話します。

1階の和室には東と南の2箇所に掃き出し窓があります。以前は障子が入っていましたが、お子さんが幼い時期に「ベリベリに破られてしまって(笑)」。どうにかしたいとあちこち調べる中で、和風のデザインを施したエコガラスの内窓があることを知ったといいます。
早速使ったところ「破れないし、寒さによる結露もなくなりました」もともと障子があったため、窓が増えた違和感もありません。

この成功体験が2度目のエコリフォームのベースになりました。

今回リフォーム対象としたのはダイニング、浴室そして2階東南側の寝室の3箇所です。どれも窓が原因で寒さや暑さを強く感じるところで、それぞれにエコガラスの内窓をつけることにしました。

窓のエコリフォームでは、既存のサッシを生かしてガラス面だけを交換する方法などもあります。しかしTさんは「ガラスだけ換えてもサッシが結露するから」と、性能の向上を第一に考えて工事手法を選んだのです。

この姿勢は、エコリフォーム時に「住まい手としてどんなスタンスをとるか」という面で参考になりそうです。
現実味を持って窓リフォームを考えはじめると、予算・必ず解消したい悩み・新しくする窓に求める性能・工事後の使い勝手などなど、指標となる要素がたくさん出てきます。そして多くの場合、すべてを満たすのは難しい。
どこを残してどこに目をつぶるか。決めるのは施工者でも設計者でもなく、その家で暮らす人にほかならないのです。

部分工事でも暖かくなったよ エコガラスの内窓リフォーム-詳細写真02

小春日和の日差しを豊かに受けるT邸。天高く伸びて咲く皇帝ダリアが迎えてくれた

部分工事でも暖かくなったよ エコガラスの内窓リフォーム-詳細写真03

和紙風にデザインされたエコガラスの内窓が入った和室の掃き出し窓

部分工事でも暖かくなったよ エコガラスの内窓リフォーム-詳細写真04

障子が入っていた部分に内窓が設置され、室内に張り出している印象はない

ダイニングと浴室は寒さ、寝室では夏の暑さを防ぎたい

では、T邸内にお邪魔してみましょう。

ダイニングスペースはキッチンにつながり、ガラス戸を境に和室と隣り合っています。北と東に開口のある2面採光で、今回のリフォーム対象は東面の掃き出し窓です。
「冬の食事時、テーブルに着くと椅子の後ろがスースーしていました」とTさん。同様の経験をお持ちの方は少なくないでしょう。断熱力の低い窓からは、外の冷気が遠慮なく伝わってきます。

続いて浴室。引き違い窓とジャロジー窓を組み合わせて明るさと風通しを確保した、カビにくい設計です。
その反面、大きな開口からは冷たい外気が伝わって無防備な体を襲い、とくに冬場は危険をもたらす恐れがあるお風呂でした。

暖房のきいた部屋からひんやりした洗面やトイレに行くだけで、“ちょっと辛いなあ”と感じますね。さらに服を脱ぎ裸足で冷えた浴室に入るときは「おお寒い」と誰でも全身がキュッと縮みます。そこに急いでシャワーのお湯を浴びたり湯船につかると、今度は一気に血管が拡張して血圧が乱高下します。ご高齢の方や既往症がある方などは、最悪の場合倒れることもあるのです。

これがヒートショックと呼ばれるものです。
激しい血圧の変動が心筋梗塞や脳卒中を引きおこし、意識を失って浴槽で溺死する高齢者は年間1万人以上ともいわれます。交通事故による死亡よりもずっと多い数です。

T邸には現在、高齢の住まい手はおらず、また以前から浴室暖房機器も使っていました。しかし「窓がとても冷たいのと、道路に面していて音が外にまる聞こえなのが気になっていました」と、迷わず“お風呂の窓のエコリフォーム”を決めたといいます。

そしてもう1箇所、2階にあるまだ小さなお子さんふたりと夫婦の寝室の窓をリフォーム対象としました。1階と異なり、ここで求められたのは暑さ対策です。

T邸は敷地がかさ上げされ、南面に道路が走っているので、とくに2階は日当たり抜群、冬も暖房いらずの暖かさです。その分、夏の日射を遮るものがなく「暑すぎ。昼は風が通って涼しいですが、就寝前には少しの間冷房をつけなければなりませんでした」

部分工事でも暖かくなったよ エコガラスの内窓リフォーム-詳細写真05

対角線上に位置するダイニングとリビング。ダイニングテーブル背後の窓がエコリフォームされた

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2箇所に開口のある浴室。どちらも前面道路に近い位置にあり、外部に目隠しを取り付けている

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2階の寝室は東と南の2面採光で明るい

内窓でも出っぱりは気にならない ひんぱんな換気にも強み

工事は2020年の春、1日で完了しました。

5箇所の窓に取り付けられたのはすべて、エコガラスの内窓です。サッシは室外側にアルミニウム、室内側に樹脂素材を使った複合タイプ。部屋の中に樹脂製の窓枠がつくのは当初不安だった、けれど工事してみれば「とくに気になりません」とTさん。

ダイニングには、窓リフォームと同時に新しいエアコンも設置しました。キッチンまで暖かい空気が送れるよう少し大きめです。それまで使っていた灯油のストーブは、これを機会にお役御免となりました。

寒かった浴室は、浴槽上部の窓には引き違い、そして縦長のジャロジー窓には内開きの内窓を採用。内開き窓はジャロジーのハンドルに干渉せず開け閉めができ、鍵もしっかりついています。
どちらも白色を選び、外窓のブロンズ色を隠すことで浴室内の雰囲気も明るさを増したようです。

暑さ対策の寝室には、室内の雰囲気に合わせて木調の内窓を。これから迎える夏が楽しみです。

印象的だったのは、室内空間に増えた窓を住まい手がほぼ気にしていなかったことでした。

エコガラスの内窓リフォームは、とくに断熱力において、他の手法と比較しても高い評価を受けています。
その一方で「部屋が狭くなる」「開け閉めが二度手間では?」といった面で、採用を悩む人も当然います。

しかし、設置後は「思っていたより全然気にならないよ」との声を多く聞くことも確か。Tさんと同様に「外窓が隠されて部屋が明るくなった」とおっしゃる住まい手も少なくありません。
“リフォームするなら高い性能を”との気持ちがあるなら、「やっぱりうちは狭いから」と諦めず、プロと相談しつつ検討してみてもよいでしょう。

T邸リフォームの施工を担当した諸星硝子店社長・諸星孝さんは内窓について、新型コロナウイルス発生拡大と戦う現在の世情を鑑み「冬でも換気の必要性がいわれていますが、内窓があると換気しても短時間で室内が暖まりやすくなるんですよ」とも話します。
エコガラスは、こんなところでもそっと暮らしを支えてくれそうです。

部分工事でも暖かくなったよ エコガラスの内窓リフォーム-詳細写真08

キッチンからダイニングを見る。大きめのエアコンから吹き出す暖気がこちらまで流れてくる

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浴室のジャロジー窓につけられた内開きのエコガラス窓。ジャロジーのハンドルへの干渉もなく、使い勝手は変わらない

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寝室には南面の大きな掃き出し窓から日差しが入る。冬はポカポカだが、夏場は遮るもののない日射熱で厳しい暑さだった

窓からの眺めが大切だから。工事を見合わせた窓も

成功をおさめたT邸のエコリフォームは、実ははじめの計画とは変わっています。

住まい手が当初望んだのは、今回対象からはずされたリビング窓のエコリフォームでした。
長い時間を過ごすリビングには、南面に大きな掃き出し窓があります。シングルガラスの窓からは外の寒さが伝わり、結露で濡れるカーテンのカビも心配。さらに築30年を超えて歪んだサッシからは隙間風も吹き込んでくる状態だったのです。

2年前にエコリフォームした和室にも隣り合っており、相談を受けた諸星さんも「最初はリビングを工事されるのだろうと思っていました」

しかし現地調査に訪れた諸星さんと話し合う中で、Tさんはリビング窓の見積もりをやめ、工事の延期・再検討を決心します。

最大の理由は“窓からの眺め”でした。

かつてご両親の家だったT邸の庭は、茶道を嗜むお母様が丹精した四季折々の樹々や花壇、石灯籠なども立っています。リビング前から和室の脇までぐるりとめぐって中間領域を形成しているウッドデッキも、TさんがDIYでつくったもの。この家にとって庭は、なくてはならない大切な場なのです。
「内窓をつけたら、窓の桟がたくさん並んで庭の見え方が変わってしまいます」

リビングの掃き出し窓は和室より大きく、つける内窓も当然大きくなって重量も増えます。安全性や耐久性を考慮して諸星さんは4枚引きの窓を提案しました。
しかし枚数が増えれば、桟も当然多くなります。今まで何もなかった外窓のガラス面に数本、内窓の縦桟が立つのです。見える風景はやはり違ってくるでしょう。

考え抜いた住まい手は「庭の眺めを大事にしたい。リフォームはいつか必ずやるけれど、工事方法はもう一度考えよう」との結論を出したのでした。

同様に今回見送られたのが、ダイニングとキッチンの出窓です。

どちらの窓も北向きで、寒さや結露の悩みがあります。けれど「窓台のスペースがやっぱり大事」。
いうまでもなく、窓台は出窓の大きな魅力です。手前に内窓がつけば使い勝手は変わり、台の幅が狭ければ今まであったものを置けなくなる可能性も。
ここでも住まい手は再検討を選びました。

大きさ、状態、使い方。それぞれの窓にそれぞれの事情があります。そしてどの要素を最優先するかは住まい手が決めてよいのです。

Tさんいわく「全部の窓でなく、ピンポイントでも暖かくなりました。弱くなった外窓の気密を内窓がカバーしてくれているみたい。快適で、安心感もあります」

暮らしながら、考えながら、その時々の住まい方で納得できるリフォームすればいい。いっぺんにやらなくてもいいよね… Tさんのスタイルには、庭で天高く花を咲かせている皇帝ダリアのように、のびのびとした自由さがあります。
肩肘張らないマイペースなエコリフォームに出会い、爽やかな取材となりました。

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リビングと和室はほぼ一室空間扱い。エアコンは和室の壁に設置し、扇風機をサーキュレーターがわりに使って暖かい空気をリビングに送る

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リビングの掃き出し窓からは、石灯籠のある庭の風景。ここに複数の窓桟が立ったら… リフォーム方法を再検討する気持ちは想像に難くない

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キッチンの窓台はやはり便利。出窓では納得のいくエコリフォームを考えたい

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ご両親から受け継いだ築30年超の家を大切に住まいたい。家族の笑顔に我が家への思いがあふれる

取材協力(株)諸星硝子店
URLhttp://www.morohoshi-glass.co.jp/
取材日2020年12月8日
取材・文二階さちえ
撮影中谷正人
エコガラス