窓から見える青い空。この空がいつまでも続くように、いろいろ考えたいエコのこと。というわけで、エコ先進国と言われるドイツ、デンマークにお住まいのおふたりにも参加いただき、エコについてのよしなしごとを楽しく気軽に、でも真剣に語り合います。
今日もエコ日和

パッシヴハウス、って? その2

次に訪ねたのは、テュービンゲンからバスで40分ほどの町の住宅地に昨年完成した家。
ゆるい坂道を上がっていくと、大きな吸気塔が見えて、あ、あそこだ、とわたしも吸い寄せ
られます。
玄関ホールでブーツを脱いでいると(南ドイツのこの辺りでは、玄関で靴を脱ぐのが普通で
す)、居間に10人ほどの先客の姿が見え、夏の日射遮蔽の仕組みについて説明する建築家の
ライナー・グラーフさんの声が聞こえてきます。


IMG_2203.jpegのサムネール画像
居住面積155㎡(地下室、屋根裏階なし)、木造枠組壁工法(外壁:OSBボード+36cm厚断
熱材+3〜4cm石灰モルタル)、木材・石材・植物由来の天然建材優先使用、太陽光発電、雨
水利用、付加暖房設備は地元のペレットストーブ・メーカーwodtke社の製品。
エネルギー効率談義に忙しい大人たちの足下で、5歳ぐらいの坊やが気持ち良さそうにフロ
ーリングの床に寝そべってパズルで遊んでいます。


IMG_2208.jpegのサムネール画像

これも、ライナー・グラーフさんが設計からエネルギー・システム計画、現場監督まで務め
る、築48年の200㎡の家の改修工事現場です。
この写真では見えませんが、屋上に設置された太陽光発電装置はすでに稼働していて、工事
中も売電しています。
数週間後に工事が終わると、夫婦と子供2人の家族が戻ってきます。

IMG_2223.jpegのサムネール画像のサムネール画像
2階の、ルーフテラスにつづく、広々としたバスルーム。
ちいさな窓があるコーナーはサウナになります。
シャワーやサウナのあと、テラスに出て、朝ご飯をしたり、ビールを飲んだり、お昼寝した
り、ああ、いいでしょうね。


IMG_2232.jpegのサムネール画像

どの家も見学者のほとんどは、これから家を建てよう、改修したい、という夫婦連れのよう
です。前日、1軒目の家でいっしょだった若いカップルにここでもまた会います。わたしの
ような冷やかし客は他に見当たりません。
建築家や工務店にとっても、施主さんがすでに住んだり工事中だったりする現場は、広報・
営業にはもってこいのツールです。
ですから、どっちも真剣。


IMG_2228.jpegのサムネール画像

特に男性はパッシヴハウスについてもかなり勉強しているようです。
若いけれど、すでにこの地方一帯でパッシヴハウスをもう何軒も建ててきたグラーフさんは、見学者のさまざまな質問にていねいに答えていきます。
「パッシヴハウスの建設費は、国の省エネルギー基準に準じた一般の住宅に較べてどれぐら
 いアップするのか?」
「セントラル・ヒーティング設備がないが、厳寒期用にどんな暖房器具を用意するのか?」
「パッシヴハウスの中枢機能は換気システムのようだが、もし停電になったら、どうなるの
 か?」
「冬は窓が開けられないと聞くが、どうなのか?」


パッシヴハウス、パッシヴハウス、と書いてきましたが、それでは、パッシヴハウスって、
いったい、どんな家なのでしょうか?
一言でいえば、エネルギーの損失や消費が従来の建物に較べて極めて少ない建物、そして、
その実現を目的とする統合的な温熱環境計画手法です。

この手法を開発し、性能を実証してきたのは、ヴォルフガング・ファイストというドイツの
物理学者ですが、彼が主宰するパッシヴハウス研究所のHPのある個所では、簡潔に以下の
ように書かれています。(文書によっていろいろな言い方があり、ひとつの例です)

パッシヴハウスとは、(従来的な)暖房や冷房のシステムなしに、冬も夏も、快適な室温が
得られる建物である。年間暖房負荷15kWh/㎡以下、給湯と家電使用電力も含めた一次エネ
ルギーの年間消費量120kWh/㎡以下で、高い居住性を提供する。パッシヴハウスは、低エネ
ルギーハウスを徹底的に発展させたものであり、その暖房エネルギー需要量は、低エネルギ
ーハウスに較べて80%、従来的な建物に較べれば90%以上も少ない建物である。灯油に換
算すれば、年間1㎡当たり1.5リットルの消費で済む建物である。このようなパッシヴハウス
のエネルギー性能は、熱損失を予防すること、熱取得を最適化すること、という、ふたつの
基本原理だけで達成できる。

そして、
●日射や内部発熱(人の体温や家電が発する熱など)という「パッシヴな」熱エネルギー
  を最大限に利用すること
●熱橋をできるかぎり排除して高断熱・高気密にすること
●排気熱を回収する機能の高い、外気の不純物を濾過する換気システムを設置すること
これらの統合的な計画、建て方によって、
●従来的な暖冷房装置のような「アクティヴな」エネルギー利用を必要としない、
●熱が逃げない、エネルギー消費が抑制された、
●屋内を清浄な一定温度の空気が安定的に循環する、
高いエネルギー性能と快適な屋内気候、経済性を創出する ------ というわけです。

ハウスといっても、戸建て住宅だけではなく、集合住宅、業務ビル、学校や病院など公共
的な建物にも、そして、新築にも既存建築の改修にも、この計画手法は使われています。
建材もデザインもさまざまに可能で、ちょっと見には、パッシヴハウスかそうでないかは
分かりません。

1991年にファイスト博士が計画したコーポラティヴハウスを皮切りに、現在までにドイ
ツとオーストリアを中心に32,000棟のパッシヴハウスが建てられています。
「誰でもができる、みんなのためのパッシヴハウス」というファイスト博士の基本的な姿
勢にそって、多くの情報がネット上でも公開され、各国語に翻訳された計画のための手引
き書・計算ツールも低価格でネット購入できるようになっています。

日本でもいくつかのグループが日本の風土に合ったパッシヴハウス建設を進めているよう
ですね。
2週間ほど前のニューヨーク・タイムズにも「ゼロエネルギー工法が海を渡ってきた」と
マンハッタンでの事例紹介記事が出ていましたから、「パッシヴハウスの大御所」とか
「世界基準」といった乱暴な言い方をせずに済むようなときが、そのうち、日本にも来る
のでは、とわたしは期待しています。






投稿者:森さん  カテゴリー:
2011年12月20日


ページの先頭へ

プロフィール

松本さん

2011年夏から協会に参加。省エネ担当。技術開発出身で戸惑うことが多く、右往左往しています。ミステリー、オーディオとペットとの散歩が趣味。

詳しいプロフィールはこちら

木原さん

元・協会 調査役。現在は、AGCのショールーム「AGC studio」勤務。

詳しいプロフィールはこちら

福田さん

デンマークに1993年より在住。環境に優しくて健康的なライフスタイルを自転車で走りながら実践しています。

詳しいプロフィールはこちら                 

上山さん

ミラノに22年目、古いものと新しい物が混在する面白い町です。日本のみなさまに何かお伝えできることがあれば嬉しいです。

詳しいプロフィールはこちら                 

森さん

南ドイツの小さな大学町テュービンゲンで「競争するより協同で」を教わりながら育つ。暮らしの中や旅路で出会う人たちの人生の多様性に魅了されています。

詳しいプロフィールはこちら

Calendar

2019年2月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28    

Category

news

Back number

エコガラス

窓からエコをはじめませんか。熱をしっかり遮断する、省エネのエコガラス。

エコガラス

Copyright © 2006-2010 板硝子協会. All Rights Reserved.