春の前に

街の広場の池では自治体の「氷上への立ち入り禁止」と書かれた赤い札が立てられたまま。大きな白鳥が氷の上を歩いているのを見ると、氷は厚そうだけれど、安全ではないのだそうです。とうとう待ちかねた子供達が、誰もいないと思ってスケートを楽しんでいたら、地元紙の記者に見つかって、新聞に証拠写真が。
3月の春の陽射しは氷よりも強いようです。少しずつ寒さが和らぐという長期予報で、今年もスケートはできないと諦めました。ところで気象情報の各地の便りでは、流氷の紹介がありました。海の表情は各年それぞれ、冬の寒さは同じように感じても、海面全てが氷で覆われてしまう年もあるし、寒くても凍らない年もあります。今年はコペンハーゲンのあるシェラン島北部のウアスン海峡海岸沿いに流氷が寄せました。

次の日に海岸へ行ってみると、大きな白い板状の氷が、浜に集まっていました。少し強い風が吹いていて、大きく揺れる波の上に、数羽の白鳥が浮いています。

海岸沿いの白い面積は北にある湾内で大きくなっています。

氷の上の空気が冷たいからか、海岸沿いの強い風がとても寒く感じます。昼間は温かくなると聞いていたので薄手の上着と手袋で出かけたので、とにかく寒くて、早々に退散することにしました。海岸通りを折れて住宅地へ入ると、すぐに温かい空気を感じました。もう春はすぐそこまで来ていて、氷と雪とはお別れのようです。
ところがまた雪。明るい光に誘われて花を開いた待雪草は、待っていた雪に包まれています。

暖かくなる前にと、剪定を終えたばかりの庭のリンゴはまた冬の装いになりました。シベリアの冬将軍が撤退前に、冷たい息をデンマークの上空で吹き放したみたいです。

空から雪がどんどん降り続き、道も家も樹木も、風景が白く塗り替えられました。ずいぶん降ったと思いましたが、地面に積もった雪は10cmほど。

気温が上昇して雪が溶けてしまう前に、思い切ってクロスカントリースキーを持ち出しました。久しぶりに森の中をスキーで。白い森には誰もいません。伐採した木材を荷積する作業中の運搬車が見えたほかには、森の幼稚園の子供達の声が遠くに聞こえるだけです。
森の坂道を南へ向かって下ると、緑の葉をつけた松の木の多い場所では、雪が少なくなっていました。仕方なく折り返し、来た道を自分のスキーの跡を辿っていくと、誰かの足跡が重なっています。人影は見ませんでしたが、私の後を誰かが歩いたようです。
今年最初で最後のクロスカントリースキー。スキーもスケートも来シーズンまでおあずけ。
春は近いようです。
