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事例紹介 / リフォーム

遠州のからっ風に負けない
あったか内窓をエコガラスで

静岡県 U邸

立地
静岡県湖西市
住宅形態
木造2階建
リフォーム工期
2021年10月(1日間)
窓リフォームに
使用した主なガラス
エコガラス(内窓)
利用した補助金等
グリーン住宅ポイント

百年の歴史を守る旧家の別棟でエコリフォーム

冷たく強い北風と冬の寒さに耐えてきた、大きな窓のエコリフォームをご紹介しましょう。

東に浜名湖、南に遠州灘が広がる湖西市は、江戸・明治の昔から綿織物の産地として栄えてきました。トヨタグループ創始者であり国内初の自動織機を発明した豊田佐吉誕生の地でもあります。

U邸はその歴史を今に伝えながら繊維業を営む旧家。築百年を超える純和風の住宅は、見事な鬼瓦をいただく大屋根の下に座敷から小部屋まで大小二十数余もある部屋や長く延びた広縁、玄関土間などがおさめられた、初めて訪れれば迷子になりそうな広大な住空間です。

この母屋の西に付随する現当主夫妻の居住スペースが、今回のエコリフォームの舞台となりました。

遠州のからっ風に負けない あったか内窓をエコガラスで

現時点で4代目の居住という、築百年超のU邸母屋。家族が過ごす個室・居間・台所・水まわりなどのほか、襖を取り払って冠婚葬祭や寄り合いなどもできる田の字型の広々とした座敷、衣類を保管する長持や布団を収納する部屋など、日本の伝統的な大店の住居を彷彿とさせる。敷地内には蔵や庭も複数ある

遠州のからっ風に負けない あったか内窓をエコガラスで

別棟に続く広縁は、昔ながらの木枠のガラス建具越しに庭とつながっていた

導かれたのは、二間続きにキッチンスペースがついた平屋の別棟です。
瓦屋根の和風と思いきや、室内には山小屋風の高い三角天井が。中央の梁にトラス部材を立て、間仕切り壁の上部は抜かれて部屋同士がつながる半一室空間でした。

この家で生まれ育ったという奥様は、結婚と同時に増築したこの住まいを「当時はカントリー調に憧れていて、こうしました。大きな窓もほしかったですね」とにっこりしました。

遠州のからっ風に負けない あったか内窓をエコガラスで

Uさんご夫妻の居住スペースである瓦屋根の別棟。南に向かって大きな掃き出し窓が並ぶ

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間仕切り壁の上部を抜いて寝室とリビングがつながる。中央のトラス部材と板張りの三角屋根で山小屋風のナチュラルな雰囲気が醸し出されている

大きな窓から入り放題? 外の冷気と騒音と

夢が詰まった洋風の部屋は、冬の寒さを強く感じる空間でもありました。
気温自体はさほど低くないものの、北西から吹きつける『遠州のからっ風』は、世に知られる通りの威力なのです。

南北につけられた計4箇所の窓は、掃き出し窓では横幅2.6mほどもあり、通常よりひとまわり大きなサイズ。この開口にシングルガラスがはまっていれば、外の冷気の入り込みはやはり相当なものになります。
新築当初は障子を入れていたそうですが「外の景色が半分しか見られないのが残念」とブラインドに交換。断熱力は下がっていました。

部屋ごとにエアコンやガスストーブを置いたものの、高い天井に加えて中央がつながっているため全体の気積が大きくなり「熱効率は悪かったんです」

別の悩みもありました。
当主のUさんいわく「少し離れたご近所の声がなぜかよく聞こえました。つまり、こちらの声も聞こえているということですよね」
からっ風が吹く日は窓枠のガタガタ音も耳についたといいます。寒さに加えて防音面でも、問題の解決が急がれていたのです。

遠州のからっ風に負けない あったか内窓をエコガラスで

南側掃き出し窓はいわゆる『9尺の2枚引き』。現代で換算すれば横幅2.6m超で、住宅としてはかなり大きい

  遠州のからっ風に負けない あったか内窓をエコガラスで

寝室の北に切られた腰窓。夏は反対側の掃き出しとともに開ければ風がよく通り、涼しいという

エコリフォームのきっかけは「窓を換えたら、簡単でしかもとても暖かくなったのよ」と、奥様のお友達が話されたことでした。

“窓の改修”と聞いてUさんは、旧知の間柄だったガラス・サッシ工事の専門会社・平野硝子の平野尚司社長に、悩みを改善できるか相談します。
隣町からかけつけた平野さんは、さっそく現地調査で状況を把握。「何よりも効果の高さを重視・優先したい」とのUさんの意向を確認した上で、断熱と防音双方の性能にすぐれた内窓の設置を提案しました。

「樹脂のサッシに、エコガラス・複層ガラス・シングルガラスそれぞれを入れるパターンを紹介し、うち最も効果の高いエコガラスをお勧めしました」

施主がどれを選んだかは、説明するまでもないでしょう。

遠州のからっ風に負けない あったか内窓をエコガラスで

午後の日差しを受ける南窓。冬晴れの日には内窓を意図的に開けることで室内に日射熱が入り、ぽかぽかとした陽だまりを享受できる。日が陰ったら閉めるのを忘れずに

遠州のからっ風に負けない あったか内窓をエコガラスで

日照時間が長く暑い静岡の夏をも考慮し、日射遮蔽型エコガラスを採用

起床から眺めまで、エコガラスが暮らしを変えた

工事は2021年10月、結露で困っていた洗面所の出窓も含めて行われました。

「全然、あったかくなりました。暖房が効いている感じがします」奥様の言葉に「朝はエアコンのタイマーを使わなくなりました。前の晩の暖かさが朝まで続いているようです」とUさんが続けました。

リフォーム以前、早朝に起床するUさんは起きるとまず隣室のガスストーブをつけ、布団に戻って部屋が暖まるのを待ってから再度起き出していたそうです。それがなくなり、すっと動けるようになったとのこと。
窓の断熱力が高められて就寝中も暖かさが逃げず、室温が下がらない様子がうかがえる話でしょう。
「音も聞こえなくなりました。風のガタガタも、先日の夜中の雨にも気づきませんでしたよ」

遠州のからっ風に負けない あったか内窓をエコガラスで

起床後、Uさんが朝のひとときを過ごすリビング。ガスストーブをつける際は天井のファンを回し、寝室も含めて居室全体に暖気を送る

予想外のおまけ? もありました。奥様いわく「横の桟がなくなったのがすごくいい! 外がとてもきれいに見えるんです」

現代の内窓工事では、従来の窓ではガラスを支えるため必ず入っていた横桟が、技術の向上によって大きな掃き出し窓でも不要となっています。
何十年も丹精されてきた我が家の庭を気持ちよく眺めたい。立派な庭を持つ旧家のみならず、ガーデニングを楽しむ多くの人々にとってはもっともな思いでしょう。
こんな場面でも、エコガラスは貢献しています。

遠州のからっ風に負けない あったか内窓をエコガラスで

左の外窓を引いて内窓だけに。視線の通り方の違いはいうまでもないだろう

遠州のからっ風に負けない あったか内窓をエコガラスで

結露が悩みだった洗面は、出窓を生かすために内窓を選ばず、薄型の真空断熱ガラスでエコリフォーム

数値やデータでも効果を知りたい エコリフォームに期待されるもの

大成功をおさめたU邸の窓リフォーム。暖かい冬を迎えられるのはもちろん、やがてくる夏も、全国有数の日照時間を誇る静岡の強力な日射熱をはね返して涼しさを保ってくれることでしょう。

遠州のからっ風に負けない あったか内窓をエコガラスで

北側の窓台は広く、内窓枠のせり出しは一切ない。かつて障子が入っていた敷居は旅の思い出が息づく大事な場所に

その一方で「エコガラスのことをもっと知りたかった」という奥様の言葉も忘れがたいものでした。

平野硝子に依頼する以前、一度相談したリフォーム店から“窓を換えてもさほど効果はない”“お宅の窓には内窓はつかない”といった言葉を聞いたというのです。

「自分の家の窓がエコリフォームできるのか、内窓がつくのかどうか、わかりづらいです。 それに、実際につけた時の効果を数値データの形でも知りたいな…とも思いました」

施主にとって、ごく自然な思いでしょう。
現実には住まいの築年数や形態、ついている窓、周辺環境に至るまで、現場の状況はまさに十人十色。家の数だけエコリフォームがあり、一般化できる数値の抽出は現時点ではかなり難しいのが実情。平野さんも「ケースバイケースなので、やはり難しいですね」。
奥様の気持ちを思いやりつつ、企業経営者であるUさんも「実際に数値を出すのはね…よくわかります」とうなずきました。

でも、と平野さん。「もっともっと説明していかなければいけないと思っていますよ」と力を込めました。

遠州のからっ風に負けない あったか内窓をエコガラスで

今は独立したご子息やお孫さんも頻繁に訪れるというU邸。記憶を辿りながら楽しげに語ってくれたご夫妻の笑顔の裏には、父祖の時代から続く歴史と時間を大切に守り抜こうとする強く静かな意志が感じられた。親身になってエコリフォームを手がけた平野さんは「ベストの提案をし、受け入れていただいてありがたかったです」と微笑んだ(撮影時のみマスクを外していただきました)

SDGsが一般的な言葉となり、誰もが環境について日常的に考える時代。エコリフォームを希望する人々も日々、知識や情報を収集し思考を磨いています。
U邸のように長い時間と歴史を内包する伝統的な建物のリフォームも、さらに増えていくでしょう。

日々レベルアップする施主の思いに応えていくことは、エコガラスそしてエコリフォームに関わり、プロとして仕事をするすべての人々に課せられた大きな使命ではないでしょうか。

遠州のからっ風に負けない あったか内窓をエコガラスで

冬の日を受けて銀色に輝く鬼瓦はU邸のシンボル

取材協力
平野硝子(株)
https://hirano-glass.co.jp/
取材日
2021年12月2日
取材・文
二階さちえ
撮影
小田切 淳

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