窓から見える青い空。この空がいつまでも続くように、いろいろ考えたいエコのこと。というわけで、エコ先進国と言われるドイツ、デンマークにお住まいのおふたりにも参加いただき、エコについてのよしなしごとを楽しく気軽に、でも真剣に語り合います。
今日もエコ日和

海辺を守るライン


 
海辺から広がる緑地帯
海辺から広がる緑地帯
 
大西洋からの温かい空気がシベリアの寒気を押し上げて、2月だというのにデンマークでは温かい日が続いています。残念ながら、海を越えて来る風は湿っているので、空には灰色の雲が立ちこめて雨もしばしば。けれども雨雲の間から太陽が顔を見せると、春を思う光に誘われて、黄色い節分草や白い待雪草が地面に頭を出しています。早い春の花に笑顔を見せるデンマーク人は「今はまだ冬だから。春には遠いよ」と話しています。2月と3月そして4月には、きっと冷たくて寒い冬の日が来るに違いありません。そのあとにゆっくり訪れる春を、北欧の人々は辛抱強く待っています。

 
待雪草
待雪草
節分草
節分草
 
気温は氷点下、冷たい風が強く吹いた1月31日の夜、デンマーク全国の浜辺の200か所で人々が焚火を囲んで集まりました。2015年10月に政府が提案した海岸沿いの自然と環境保護に関わる法律の改正に対して、反対する意思表示のためです。集まった人々は述べ30000人、政府への抗議を表すために、人々が手にしたトーチは約12000にも及びました。海辺の自然を全国民が利用できるように、そして自然と環境の保護のために、1930年代から開発と開拓を制限および禁止してきたデンマークでは、印象派時代の絵画と同じ風景が残り、特有の植物や動物が生息しています。しかし、政府は既に観光目的のレジャー施設や別荘等を海辺に建設する幾つかの事業を許可し、さらに、海岸沿いの国有地を土地開発業者に売却する方針を明らかにしたほか、海岸を守る開発禁止領域の撤廃を提案したのでした。

 
海岸沿いの湿地帯
海岸沿いの湿地帯
 
デンマークの国土はドイツと接したユトランド半島のほか、首都コペンハーゲンが位置するシェラン島、童話作家アンデルセンが生まれた街オーデンセのあるフュン島をはじめ大小約500の島々からなっています。ですから海岸線はとても長くて、全長は7300キロメートルを越えています。そして、古代からデンマークの人々の暮らしは海と深いつながりがありました。石器時代の遺跡も魚介類の採れる遠浅の海岸沿いに多く、また中世にはバイキング時代や新大陸発見の時代に、大きな船で大西洋を越えて、新たな土地を求めて航海した歴史が残されています。近代以降も海運や漁業と造船業は国家の重要な産業でした。現代でも、デンマークを代表する大手企業の数社は海運業者です。そしてまた島と島を結ぶフェリーや連絡船などが、人々の暮らしを支える重要な交通手段として利用されています。さらに、セイリング、ボートやカヌーなどのマリンレジャーや、浜辺の日光浴、そして海釣りなども、デンマーク人の代表的な余暇の楽しみです。
 
人だけでなく、様々な種類の鳥や動物たちも水辺にやってきます。幾種類のカモメ、鴨や白鳥が水辺で戯れる風景が、いつでも見られます。ムツゴロウのような砂地に住む生物や多くの珍しい鳥類が見られるユトランド半島の西海岸に沿った湿地帯のように、野生動物の特別保護区に指定されている海岸や浜辺もあります。
 
デンマークの海岸線の風景は1800年代後半から大きく変化しました。富裕市民たちの豪邸が海を望む景観の良い地域に次々と築かれ、郊外では避暑地が開拓され、また街の港湾近くには工場が建設されたのです。
 
時代を経て、産業が発展し、国家が豊かになった1930年代に、こうした海岸の開発が自然破壊につながることを憂慮した政府は、海岸における建物を建設する領域を制限する「建物設置限界線」を設置しました。これによって1937年以降、海岸線より100メートル以内の領域における建物の建設は禁止されたのです。
 
第2次世界大戦後、より大規模な開発が可能になり、よりたくさんの人々が別荘を所有できるようになると、1960年代には、海岸の自然保護を強化するために、政府は「建物設置限界線」の名称を「海岸保護線」に変更しました。そして海岸線より100メートル以内では建物の建設だけでなく、土壌の入れ替えや植栽も禁止されました。これは、海岸に生息する生物種や自然の風景をデンマークの貴重な財産として保護するためでした。


自然のままの海辺の風景
自然のままの海辺の風景
 
現在の海岸保護線は海岸より300メートルに指定されています。1994年に海岸の自然破壊と天然資源の保護を確固なものとするために、新たに建設される建物や植栽、および農業用地の領域を、さらに200メートル内陸へと後退させることが国会で決議されたのです。既に市街地区域にまで発展している地域は対象外であるものの、農業地域や森林である場合、海岸線から300メートル以内の新たな開拓とプランテーションは禁止され、既存の用地での栽培には自治体の指導を受けることになりました。郊外の別荘地では、従来通り限界線が100メートルで暫定となっているものの、建物の改築では自治体の指導に基づくことが義務づけられているほか、新築物件は300メートルより陸側で建設しなければなりません。
 
海岸線は自然に任せたままでも、打ち寄せる波ごとに変化しています。人の計り知れない長い時間の単位を過ぎ行くごとに、自ら形を変えていきます。人が自然に近づきすぎて傷ついた事実は、歴史上にいくつもの例が挙げられます。自然をそのままにしておく賢明さが、雄大な風景を守っているのです。

 
牛を放牧して緑地整備
牛を放牧して緑地整備 




投稿者:福田さん  カテゴリー:
2016年2月12日


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2011年夏から協会に参加。省エネ担当。技術開発出身で戸惑うことが多く、右往左往しています。ミステリー、オーディオとペットとの散歩が趣味。

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